繊維ニュース

帝人フロンティアの短繊維事業 量的拡大も重視

2024年09月10日 (火曜日)

 帝人フロンティアの産業資材部門短繊維素材本部は、ポリエステル短繊維・不織布に関して、これまで続けてきた高付加価値品による利益重視の姿勢に加え、今後は量的拡大も重視する販売戦略を採る。特に自動車関連や寝装用途での拡大に期待を寄せる。

 同本部の2024年度上半期(4~9月)商況は、前半に自動車メーカーの生産停滞の影響を受けて車両向けポリエステル短繊維と不織布原反ともに振るわなかった。ただ、自動車関連用途は、8月以降は回復基調にある。また、衛材向けも市況低迷で勢いがない。一方、生活資材向けは安定している。

 水処理用膜支持体向けが主力のショートカットファイバーは中国市場での販売が堅調な一方、北米市場は流通在庫の調整局面となったことで7月ごろまでは低調だった。ただ、こちらも8月以降は徐々に回復に向かっている。

 24年度下半期(24年10月~25年3月)に関して堀田敏哉本部長は「自動車関連用途は回復が期待できる」と指摘する。10月以降は自動車メーカーの生産計画も正常化しており、それに合わせて車両用不織布の原綿・原反ともに荷動き活発化が見込める。

 こうした中、堀田本部長は「これまで高付加価値品の販売に特化してきたことで、販売量の減少が進みすぎた。もう少し量的拡大が必要」と課題を指摘する。このため今後は自動車や寝装など数量が期待できる用途での拡販に力を入れる。ここに来て競合他社が国内の生産能力を縮小する動きを見せていることから、構造的な供給過剰も緩和される可能性がある。これを受けて、タイ子会社のテイジン・ポリエステル・タイランド(TPL)や協力関係にあるインドネシアのティフィコの生産品でシェア拡大を目指す。

 また、旺盛な需要が続いているショートカットファイバーも25年末までにTPLの生産能力増強が完了し、生産量が約10%増加する。こちらも中国や北米市場を中心に引き続き水処理用膜支持体向けなどで拡販を進める。

 そのほか、ポリエステルエラストマー繊維「エルク」や縦型ポリエステル不織布「V―Lap」など繊維構造体は自動車向け不織布部材のドイツ子会社であるジーグラーと連携し、カーシートのワディングやシート裏張りといった用途での販売拡大を狙う。

 現在、欧州を中心に自動車分野でもリサイクル性を高めるために“モノマテリアル”(単一素材)化の動きが強まっていることから、ウレタン代替としての需要開拓を目指す。