繊維ニュース

ボーケン品質評価機構 品質支援事業本部/繊維から対象広がり、深まる

2024年09月06日 (金曜日)

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)が2022年に品質支援事業本部を立ち上げて、今年で3年目に入った。品質支援、サステナブル支援、教育支援の各業務に取り組み、対象も繊維だけでなく生活雑貨、家具、玩具、化粧品、食品関連などへも広がり深まった。事業本部の枠を超えた取り組みも拡大し、品質支援事業に係る人数は70人を超える。従来型の品質試験機関から、「品質保証パートナー」への進化をリードする事業本部としての存在感が高まっている。

〈繊維製品の品質支援/環境配慮設計にも対応/受注件数は3倍規模に〉

 品質支援業務は、品質管理の基本となる品質基準書の作成・管理をサポートするほか、商品リスクチェック、品質表示の確認なども法令確認まで含めて助言する。工場での品質管理監査(工場QC監査)の支援と改善のための生産技術コンサルティングを行ってきた。繊維分野で堅調に依頼件数を伸ばしており、受注件数はこの3年間で3倍の規模になっている。

 特に品質や機能に関する国際標準規格(ISO)や日本産業規格(JIS)など規格や景品表示法など法令に準拠した原料や縫製リスクの洗い出し、試験提案も含めたサンプルチェック、表示作成・校閲などで大手の通販メーカーやスポーツメーカーとの取り組みが進んだ。品質管理人材セミナーなど教育支援も組み合わせることで依頼企業が自立して品質保証体制を構築することをサポートする。

 また、工場管理では、外国人技能実習生の課題もあり、QC監査だけでなくCSR監査までサポートする要望が多い。ボーケンがサポートする監査によって、自社工場だけでなく優れた協力工場を選択することに取り組む依頼企業が増えている。

 繊維分野の品質支援で今後力を入れるのが環境配慮設計への取り組みだ。経済産業省が環境配慮設計ガイドラインを策定し、繊維企業に対して11項目を提示し、2030年までに企業普及率80%の目標を掲げている。11項目のうち「長期使用」「リペア・リユースの活用」「易リサイクル設計」といった内容を組み込んだ品質管理支援の提案を進める。

〈生活雑貨・玩具の品質支援/豊富な知識が不可欠/重大事故や法令抵触を防止〉

 繊維だけでなく、生活雑貨や玩具、家具、化粧品、食品などを対象にした品質支援業務も拡大した。生活雑貨や玩具はアイテム群が多く、製品安全や法令順守について豊富な知識が不可欠だ。このため品質基準書作成や企画段階からのリスクチェック、表示チェックなどの依頼が多い。重大事故や法令抵触を防止できるため、継続的な支援を求める依頼企業が多い。

 消費生活用品安全法が改正されたことで、玩具は安全性の確認が事前規制へと変更された。ボーケンの基盤を活用すれば、リスクチェック後に確認試験や性能評価ができ、完成品としての性能を評価できる。物理的・化学的安全性の試験をワンストップで確認できる体制の構築も進める。また、生活雑貨や玩具は中国での生産が多いが、現地での対応も可能だ。教育支援による人材育成に加えて、法改正やリコール情報の提供なども定期的に実施する。

〈サステナブル支援/GHG・LCA算定を支援/“人権”も大きなテーマに〉

 企業のSDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティーに対する取り組みをサポートするサステナブル支援のニーズも一段と高まった。欧州の取り組みが加速する中、日本の繊維産業もそれに追随することが求められており、経産省が定めた環境配慮設計ガイドラインの普及と企業活動に関する情報開示が求められている。

 環境配慮設計ガイドラインでは「環境負荷の少ない原材料の使用」「GHG排出量抑制(LCA)」「廃棄物の抑制」など製品の環境負荷項目を明記することが求められる。このためGHG排出量やLCAの算出に関するサポートとコンサルティングへの要望が増えた。

 もう一つ大きなテーマになっているのが“人権”だ。外国人の就労を認める特定技能制度に繊維業が追加されたことで、これまで以上に外国人労働者に対する人権尊重が大前提となる。このためサステナブル支援として人権に関する方針の策定から優先課題の特定、現状把握としてのCSR監査を実施することで依頼企業のサプライチェーン全体での人権に対する取り組みを支援する。

 24年度に入って繊維だけでなく食品、樹脂、化学品など幅広い分野の企業に対してCSR監査を実施するなど、この分野でも実績が高まっている。

 GHG・LCA算出など高度な専門性を提供することで依頼企業のサステな取り組みと事業戦略を結び付け、企業価値向上を支援することを目指す。

〈教育支援/仕組み実践できる体制へ/運用する人材など基盤づくり〉

 現在、人材を「資本」と捉え、その価値を最大限引き出すことで持続的な企業価値向上を目指す「人的資本経営」が主流となっている。このため教育支援も品質支援事業本部として特に力を入れる業務だ。品質支援やサステナブル支援で仕組みを構築しても、運用する人材がいなければ持続的な取り組みとはならない。このため教育支援が基盤となる。依頼企業の人材が成長し、自立して品質管理やサステに関する取り組みを実践できる体制作りを支援するのがボーケンのコンサルティング業務の基本となる。

 ボーケンの内部でも教育体制を強化しており、資格制度を設けるなどで高レベルな人材しか依頼企業に対応できない仕組み作りを進めた。これを強みに依頼企業の要望レベルに合わせた訪問型OJT指導、セミナー(対面・オンライン)、オンデマンド型セミナーなど多彩な教育プログラムを拡充し、効果の確認やレポート提出後のフィードバックなどで依頼企業の従業員の成長の“見える化”に取り組むのも教育支援業務が目指すところだ。

〈品質支援事業本部長 野本 由美 氏/依頼企業とともに成長する〉

 品質支援事業本部が発足し、今年で3年目に入りました。品質支援、サステナブル支援、教育支援の各業務に取り組む中で、1年ごとに手応えを感じてきました。

 いずれの取り組みも、当初はボーケンがサービスを提供する形でスタートしましたが、活動を通じて依頼企業の皆さまが経験を蓄積し、自立して品質、環境、人権をつなげる活動をするようになっています。それこそがボーケンの品質支援事業が目指す形です。

 ボーケンは、人材を「資本」と捉え、重視する運営を続けています。品質支援事業本部にとっても、この3年間で人材の質を高めることができました。事業を通じて依頼企業とともに成長できたことをとてもうれしく思います。こうした取り組みを通じて、繊維業界全体の底上げにつながればと考えています。