シリーズ事業戦略/大和紡績/独立を成功に変える/取締役製品・テキスタイル事業本部長兼産業資材事業本部長兼産業資材部長兼生産技術部長 青柳 良典 氏

2024年09月03日 (火曜日)

 ダイワボウホールディングス(HD)グループから独立し、“第三の創業”へと一歩踏み出した大和紡績。大きく社内体制が変わったわけではないが、「社員がいてこその大和紡績」(青柳良典取締役)であり、社員一丸となって「独立を成功に変えていく」動きを活発にしていく。今期はスピード感を持って着実に計画の達成に向け歩みを加速させる。

――3月27日にダイワボウHDグループから独立し、新たなスタートを切りました。

 事業計画や運営がこれまでと大きく変わったわけではありません。昨年11月にダイワボウHDが発行済み株式85%をアスパラントグループの特別目的会社に譲渡すると発表して以降、有地邦彦社長をはじめ、われわれ経営陣は心を砕きながら従業員へ理解を深めてきました。社員がいてこその大和紡績です。従業員と一丸となって企業価値を高めながら、独立を成功させていかなければいけません。

――第1四半期(4~6月)はいかがでしたか。

 合繊事業ではこの暑さによって制汗シートの販売が増えています。フェースマスクの販売も新型コロナウイルス禍が明けてからも非常に好調で、製品・テキスタイル、産業資材事業を含め全社的にも増収増益で推移しています。

 製品・テキスタイル事業は、前期の第4四半期から春夏物の受注が堅調です。インナー製品を中心とした対米輸出は、米国での景気後退を受け調整に入っていましたが、回復基調になっています。まだ以前のような状況には戻っていませんが、90%ぐらいまでには戻っており、新たな商談も進めています。

 産業資材事業は前期から回復しており、計画に近いところまで来ています。電子部品向けカートリッジフィルターは取引先の工場の稼働率が上がってきました。本格的な回復は下半期からになるとみられます。

 パッキン材などゴム製品分野は中国経済の景気悪化の影響を受けていますが、国内の自動車・建機に向けては堅調です。

 土木シートの販売は公共工事の減少で苦戦していますが、遮水シートは計画通り販売が進んでいます。東京や九州では大規模な再開発の動きもありますから、そのような動きに対してしっかりフォローしていきます。

 カンバス・メッシュベルトは苦戦気味です。製紙メーカーの中で輸出を主にしていた企業が海外企業との競合で環境が厳しくなっているほか、一時期ネット通販によって増えていた段ボールの需要拡大で設備投資が一巡した影響も出ているようです。

 製品・テキスタイル、産業資材の両事業とも増収増益で推移しています。ただ、産業資材事業では売り上げが順調に増えていますが、値上げが第2四半期にずれ込んだ部分もあり、利益面では少し計画に対し下回っています。

――下半期に向けての見通しは。

 フィルター関連などの回復が見込まれ、前期を上回るだけでなく、計画もクリアしていければと考えています。

 産業資材事業のフィルターでは原料から製品までの一貫生産体制を構築しており、播磨研究所(兵庫県播磨町)での研究と出雲工場(島根県出雲市)を連携させながら、高機能化を進めています。独自の繊維技術と、フィルター製造技術を融合させて開発した、精密ろ過機能を備えたカートリッジフィルター「セキソウ」や「ウェーブスター」を軸に需要を捉えていきます。

 新型フィルターの試験も進めており、3カ年の間にはしっかりと形にしていきます。現状では、より高精度が求められるフィルターは米国メーカーがシェアを握っていますが、そのような分野に向けても開発を進めており、結果を積み重ねていくしかありません。

 製品・テキスタイル事業では昨年、暖冬の影響で秋冬物が苦戦し、今年もあまり期待ができません。為替の影響もあり、価格転嫁を進めていますが、実質賃金が上がらないことから前売りでは値上げに対する拒絶感が強まっています。

 ただ、環境配慮型素材に対するニーズは高まっており、リサイクルポリエステルを米綿で包んだ2層構造糸「ツインレット」や、リサイクルナイロンタイプの「ツインレットN」、生分解性のポリエステル繊維を使用した生地「パルテラ」、リサイクルナイロン使いの涼感生地「クールデプロ」など幅広くそろえています。

 高まるトレーサビリティーへの関心を受け、米綿100%の「テキサス7」といった素材も提案できます。予想される秋冬物の落ち込みを、特徴のある素材を使ったOEMでカバーするとともに、市場での認知度を高め、リピートや新規開拓につなげていければ。

 新たな資本体制になり、業績の管理や施策の実行などいち早く課題を見つけ、スピード感を持って対応できる体制に変わりつつあります。中計達成に向け、結果を積み上げながら、しっかりと事業基盤を固めていきます。