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東洋紡エムシー/係留索に「イザナス」/洋上風力発電実験に参画

2024年09月02日 (月曜日)

 東洋紡エムシーは、大林組が国内で初めて青森県の沖合の実海域で実施する浮体式洋上風力発電施設のテンション・レグ・プラットフォーム(TLP)型浮体設置実験に東京製綱繊維ロープ(愛知県蒲郡市)とともに参画する。実験で用いる係留索に東洋紡エムシーが新規開発した超高強力ポリエチレン繊維「イザナスULC」を採用し、係留索の共同研究開発に取り組む。

 イザナスULCは、従来のイザナスの高強力・高弾性率を維持しながら、継続的に荷重を加えることで変形が進む現象を抑える耐クリープ性能を大幅に向上させた。これにより浮体式洋上風力発電施設向けロープの原糸として国内で初めて日本海事協会の承認を取得した。従来品と比べて疲労耐久性が向上したことで、長期間浮体の定着を安定化させることが期待できる。

 洋上風力発電施設は、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式がある。遠浅の海域が少ない日本では浮体式の導入が期待されている。浮体式のうち、海底のアンカーに係留索で浮体を結び、浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して基礎を機能させるTLP型浮体は動揺安定性や発電効率が高く、海域の占有面積も小さいため漁業への影響も小さい。

 ただ、TLP型浮体は設置が難しく、洋上風力発電の基礎として国内での施工実績はない。このため大林組は青森県下北郡東通村岩屋の沖合3㌔の海域にTLP型浮体を設置し、実証実験を実施する。アンカーと浮体をつなぐ係留索にイザナスULCを採用し、実際の波浪条件での浮体の動揺安定性や係留索の緊張度の変化、係留索と浮体の適用性などを検証する。