この人に聞く/東レ テキスタイル事業部門長 西村 友伸 氏/用途・分野の壁超えて

2024年09月02日 (月曜日)

 東レのテキスタイル事業部門は4事業部で幅広い用途・分野でのテキスタイル事業を推進してきた。この強みを生かしながら、用途・分野の壁を超えることでさらなる進化を目指す。4月に就任した西村友伸部門長に話を聞いた。

  ――これまで海外勤務が長かった。

 ほぼ14年ぶりに日本で仕事をすることになりました。日本に帰ってきて一番印象的なのが、北陸産地の力強さ。それこそ14年前は産地企業も中国などに進出するなどしないと生き残れないといった議論がありましたが、現実は現在でも国内で隆々としています。これには良い意味で驚きました。

  ――テキスタイル事業部門の課題は。また、今後の方針は。

 部門には婦人・紳士衣料、スポーツ・衣料資材、テキスタイル貿易、機能製品の4事業部があり、どうしても事業部の間に壁があるように感じます。そこで部門長に就いて以降、全ての課のスタッフとミーティングを順次実施し、率直な意見を聞いてきたのですが、用途・分野を超える面白いアイデアを持った若手がたくさんいました。ところが、なかなか実行できない。理由を調べると、それを評価する仕組みが不足していることが分かりました。そこでKPI(重要業績評価指標)も少し変えて、若手が用途・分野の壁を超えた新しい取り組みをもっと実践できるような環境を整備しているところです。

 瀬田工場(大津市)内のテキスタイル・機能資材開発センターが4事業部の部長を集めてプレゼンテーションをしました。現在、当社は独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」による素材開発が加速していますが、これが最高の強みになります。用途・分野横断で提案することで一段と可能性が広がるはず。そうした合繊の魅力を消費者に知ってもらうことも重要です。現在、当社の遮熱・遮光・UVカット生地「サマーシールド」がSNSなどで話題になるなど、素材ブランドが消費者に“刺さる”時代になってきました。ナノデザインも消費者に知ってもらうための発信に力を入れます。“心ふるわす繊維”を打ち出します。

  ――海外事業も課題があります。

 海外を含めたテキスタイル事業のヘッドクオーター意識をもっと持つことが必要です。東レの強みである高付加価値な糸・生地を開発し、その情報を海外関係会社に伝えていかなければなりません。既に長繊維織物では中国でこれができています。同じように短繊維織物もニットと横串を通しながら開発を進めることが重要です。見方を変えれば、短繊維を持っていることは東レの強みでもあります。日本の産地企業の力も借りながら高付加価値化を進めます。現在、中国内販でも日本のモノ作りと合繊テキスタイルを評価する需要家が増えています。それをさらに増やすことが当社の仕事です。