特集 アパレルパーツ(5)/多分野で活躍する副資材/各社各様の商品戦略/旭化成/清原/島田商事/モリトアパレル
2024年08月30日 (金曜日)
〈旭化成/裏地は最重要用途/「ベンベルグ」プロモ再開〉
旭化成はキュプラ繊維「ベンベルグ」に関して、裏地を引き続き最重要用途の一つと位置付け、海外でのプロモーションを再開する。特に海外市場での拡販に取り組む。
ベンベルグ長繊維は2022年の火災事故の影響もあり、23年は特に経糸用連紡糸の供給に制限があったが、24年度は被災しなかった設備がフル稼働となり、フル販売が続いている。裏地用途も好調だ。特に国内は婦人服向けが回復し、海外は欧州、中国、米国いずれも好調な販売となっている。
そうした中、10月1日から裏地向け生地の製造販売は旭化成アドバンスに移管し、引き続き旭化成が担う原糸販売と連携しながら裏地分野での拡販を進める。ベンベルグの現在の生産能力は長繊維が年1万トン、短繊維が同2千トン、長繊維不織布「ベンリーゼ」が同5千トンだが、26年4月からは復旧作業中の設備も立ち上がり、最終的には長繊維の生産能力はさらに同3千トン増加する。
生産能力の回復に合わせて、海外でのプロモーションを再開する。欧州は有名ブランドとのコラボレーションなどを通じてブランド力のさらなる強化に努める。中国は表地も含めた総合的なプロモーションを拡大し、展示会などにも積極的に出展する。また、日本市場は裏地需要の急拡大が望めないことから、米国への生地輸出に力を入れる。
こうした取り組みによって高級裏地素材としてのベンベルグの存在感を一段と高めることを目指す。
〈清原/装飾性持つボタン豊富に/縫製工場の課題解決支援も〉
清原(大阪市中央区)は11月、創業90周年を迎える。長年にわたり、国内外を問わず商品の仕入れ・調達力を磨き、現在は商品の取り扱い点数が約60万にも上る。豊富な品ぞろえとニーズを捉えた提案を行う「顧客対応力」で、トレンドに沿った商品を供給していく。
現在、提案に力を注ぐのが装飾性を持つボタンだ。表面加工を取り入れた商品をそろえ、副資材の意匠性にこだわるデザイナーの要求に応える。
めっきを薄く施し、つやを出したボタンをはじめ、ラバーコーティングやクリア加工によって表面に変化を持たせた商品を品ぞろえに加え、〝見せ方〟のバリエーションを増やした。
7月にイタリア・ミラノで開かれた国際服地見本市「ミラノ・ウニカ」でも、加工技術を生かして意匠性を高めたボタンが最も好評を博したと言う。今後は国内市場に向けても、高付加価値のボタンを発信していく。
品ぞろえ以外のサービスの面でも、提案力の強化を図る。4月に、縫製工場に副資材の扱い方についてアドバイスするための「縫製技術室」を社内に設置した。
同室は、縫製工場が適切に副資材を使って服作りを行うための問題解決に取り組む。技術面から顧客を支援する施策の一環であり、副資材に関して踏み込んだサービスを提供することで、顧客との新たな関係を構築する。
〈島田商事/消臭繊維「クリーンメル」/高い洗濯耐久性も〉
島田商事(大阪市中央区)の消臭繊維「クリーンメル」が、高い消臭性や洗濯耐久性で評価され、多方面で採用件数を伸ばしている。
クリーンメルは、繊維に消臭機能を物理的に付着させる方法や消臭機能を練り込む従来の方法とは異なり、化学技術を用いて分子構造を変え、糸に消臭機能を化学結合(グラフト重合)させたもの。
吸着分解の表面積が大きいため接触効率が良く、短時間で多量の気になる臭いを吸着し、即効消臭する。化学反応で繊維の分子と結合しているため、洗濯による消臭機能の低下も極めて少ない。洗濯50回後でも消臭効果が変わらないことを試験結果として得ている。
結合している消臭官能基(消臭成分)が多いことから吸着容量が大きく、化学的な吸着により、臭いの再放出がない。またセレクト消臭機能により、フレグランスやアロマなどの良い香りは残し、アンモニア臭、酢酸、イソ吉草酸など不快臭のみを軽減する。
糸はナイロン100%と綿100%の2種。生地は不織布、ダブルラッセル、スレーキ、メッシュを展開しており、さまざまなアイテムで採用が進んでいる。
このほどレーヨン・ポリエステル・ナイロン(クリーンメル)製の消臭不織布「ビ・キューム」で150㌢幅も投入した。
〈モリトアパレル/再生ナイロン100%開発/BtoCブランドも充実〉
サステイナブルプロジェクト「Rideeco」(リデコ)を推進するモリトアパレル(東京都台東区)は、廃棄された漁網を回収し、再生ナイロン糸にする取り組みを進めている。これまでは物性面で20%前後の低混率タイプしかなかったが、再生ナイロン糸100%使いの「ミューロン」をこのほど開発した。
これまでは資材関連での採用が先行していたが、細番手も可能になったことで今後は「アパレルに入っていける」。早速、スポーツブランドで採用されるなど順調な滑り出しを見せている。
基本は糸・生地での販売。「当社は生地(表地)は素人」として生地に知見のある人材も採用して拡販を狙う。ミューロン100%のボタン、ストッパーなども展開していく。日本各地で漁網回収を絡めたイベントも継続していく。
BtoC事業の拡大にも本腰を入れる。レディースダウンウエアブランド「ヨソオウ」の23秋冬は暖冬を受けて大きく苦戦したが、リブランディングを進めて反転拡大を狙う。現状は全国で実施する期間限定店と一部ネット通販で販売しているが、直営旗艦店の出店も構想する。
バッグブランドの「52バイヒカルマツムラ」は期間限定店とネット通販、卸販売をメインに売り上げを伸ばしており、今後もSNSの活用などにより拡大を図る。