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広がるデジタル活用提案/商社/実用性アピールで普及促す

2024年08月30日 (金曜日)

 アパレル業界でデジタル化の機運が高まっているものの、生産現場には3次元(3D)などデジタル技術の活用が浸透していないのが実情だ。その現状を打開するため、商社はデジタル技術導入の提案の幅を広げ、実用化を促している。(強田裕史)

 デジタルクロージング(東京都港区)はMNインターファッションの子会社で、3Dの衣服データを制作・販売する。同社が制作する3Dデータは、アパレル製品の企画・開発に加え、デジタルカタログや電子商取引(EC)サイトにも活用される。

 事業成長を図る中、アパレル業界では3Dデータを使ったビジュアルコンテンツの制作が、他業界と比較し後れを取っている現実にも直面する。その要因を、熟練した3DCG技術と時間的余裕の不足と捉え、こうした課題を解決するべく新たな事業展開に乗り出した。NTTデータが推進する、消費者の感性やニーズに寄り添った「パーソナライズド・ビジュアルコミュニケーション」の取り組みに参画した。

 この取り組みを通じ、3D衣服データを自動合成と人工知能(AI)の技術に組み合わせることで、短時間の簡易な作業で高精度の着用イメージ画像を制作できるようになると言う。

 豊島は、AIを活用したアパレル生産の普及に力を注ぐ。

 提案を進める「n感性AIシステム:バーチャルスタンダード・AIパターン」は、人の感性と基になる柄の情報を組み合わせ、数千パターンの柄を生成AIが自動で制作するサービス。柄の種類ごとに「かわいい」など好みを表現するキーワードに加え、3段階の強弱の程度を選択すると即時に柄が完成する。

 7月に東京本社(千代田区)で開催した総合展では、画像解析AIを活用したアパレル製品用のAI自動採寸装置「バーチャルスタンダード・AIメジャー」を紹介した。採寸の自動化により、作業時間を大幅に短縮できるメリットを訴求した。

 三菱商事ファッションは、アパレルに特化したシステムの導入でサプライチェーンをデジタル化し、業務の最適化を図るソリューションを提案する。その両輪を成すのが、企画管理の「Fuku296」(ふくつくろう)と生産管理の「BaseHub」(ベースハブ)というクラウドサービスだ。

 ふくつくろうは商品の企画・開発に関する業務を効率化する。商品情報、期日情報、仕様書など社内に散在するデータを一元管理することで、商品開発の速度が高まる。デジタル技術で産業を変革するDX支援のインダストリー・ワン(東京都中央区)と共同開発した。

 ベースハブは仕入れ・在庫・売り上げのデータを一元管理する。アパレル生産の発注に対応した機能を完備している。

 両サービスのユーザーからコスト削減や業務効率向上といった成果が報告されており、こうした実績も訴求材料にして提案を広げていく。