ごえんぼう
2024年09月02日 (月曜日)
燕尾服にシルクハット、隻脚でステッキをついた男の姿は、敗戦国でありながらもかろうじて日本人としてのプライドを保った▼1945年の今日、外務大臣の重光葵(まもる)が米軍艦ミズーリ号で第2次世界大戦の降伏文書に調印した。政府関係者は正装だったが、梅津美治郎参謀総長以下の軍人は、降伏を不名誉と考えるため、礼服ではなく平服を着ていた▼米兵はもっと軽装で、薄ベージュ色の開襟シャツだった。調印式が行われた甲板にはわざと小柄の日本人を威圧するために、身長6フィート(182㌢)以上の水兵を選んで整列させたとされる▼重光が調印式に臨む前、歌を詠んだ。「願わくは御国の末の栄え行き 我が名さけすむ人の多きを」。屈辱的な調印をした自分が、いずれ多くの日本人から蔑まれるぐらい栄える国になってほしいという意味を込めたそうだ。再び同じ光景を見ないためにも、未来を真剣に考える時が来ている。