特集 染色加工(9)/繊維機械 染工場の合理化に貢献/日阪製作所/伊藤忠マシンテクノス/SANDO TECH/村田機械/洛東化成工業

2024年08月29日 (木曜日)

〈染色機を国内外で拡販/自動化など強化/日阪製作所〉

 日阪製作所は染色加工場の合理化や環境負荷低減につながる染色機の提案を進める。新水洗機構を保有する液流染色機や自動走行補正システム「ACCS」に力を入れ、国内外で拡販を狙う。

 染色仕上機器事業の前期(2024年3月期)は、前の期に続いて堅調だった。日本で設備更新の動きが継続し、海外向けも寄与した。

 足元では、液流染色機の新機種「サーキュラーCUT―SQ」や「サーキュラーCUT―SG」の提案に力を入れている。SQ型は新水洗機構を搭載して節水を実現した機種。大容量化で1対4~6の低浴比を実現したZR型に水洗機構を搭載したSG型の展開も始まり、今春に第1号機が導入された。

 精練・染色工程から水洗まで全工程での自動補正運転を可能とするACCSは、リピートの導入も増えている。ACCSを搭載する新台を導入したユーザーが効果を実感し、既存の染色機にも広げる動きがあると言う。

 今後は自動化など染工場の合理化に向けた提案も強化する。足元は自動投入や工場内環境の改善に関する要望が増えており、ユーザーへのフォロー強化のほか、新たな開発にも着手している。

 染色仕上げ機器の生産は鴻池事業所(東大阪市)から生駒事業所(奈良県)に移管され、今年初めから新体制での生産が始まった。今後、日本生産品は日本市場向けを強化する一方、中国生産品の海外市場での拡販も狙う。

 日阪〈中国〉機械科技は、日本とほぼ同じ機種を生産し、SQ型やSG型の生産も始まった。現在は中国市場向けを中心に年間100台規模を生産するが、今後はアジア市場でも伸ばしていくために、日本と連携しながら販売体制を整えていく。

〈ティース製染色機を提案/超節水型も/伊藤忠マシンテクノス〉

 伊藤忠マシンテクノスは、ティース(ドイツ)の染色機を日本市場に紹介する。原料染めから糸染め、生地染め用まで染色機を総合的に展開する有力メーカーだが、日本では特に原料染めや糸染めでの提案に力を入れている。

 幅広い素材に対応する原料・糸染め機「エコブロックHV」は、自動化できる機種としても注目されており、ライン内での自動投入や自動搬送を実現して無人稼働とするユーザーもいる。効率生産にも寄与し、同社製の加圧乾燥機と組み合わせることで、綿やウールでの乾燥時間を従来の約半分に短縮するという。

 原料・糸染めの小ロット・多品種対応に向く機種では「アイコーンクアトロ」を提案する。標準タイプは1台に染色槽を4ポット、最大で6ポット搭載し、それぞれ違う色に染めることができる。量が大きい場合は全て同色で染めることも可能。ポンプがそれぞれの染色槽の真下に位置する独特な構造で、導入する企業からは染色性の高さも評価を得る。

 新しい超節水型染色機として、アルケミー・テクノロジー(英国)の噴霧型連続染色機の提案を本格化している。染料液を微細な液滴にしてノズルで噴霧し、下からのバキュームも活用して生地の裏表を染める。従来の無地染めに比べて水使用量を95%、エネルギー使用量を85%削減でき、生産に必要な人手を半分にできるという。

〈顧客の差別化ニーズに応える/日本の繊維産業のために/SANDO TECH〉

 連続式染色・仕上げ機械の総合メーカーSANDO TECH(和歌山市)は、国内染工場の差別化ニーズに応えるため、機器の入れ替えだけなく、改造、改良など最適な提案を進める。

 同社の染色関連機器の国内販売は今期(2025年2月期)、4割超伸びている。省エネや節水など環境対応のニーズに加え、ユーザーが新商品開発に取り組むなかでの改造や改良といった取り組みが増えているという。

 引き続き日本の繊維産業に貢献するという姿勢を変えず、日本の顧客を第一に対応。加えて海外日系顧客、海外の指名買い顧客に販売していく。

 海外向けの販売は前期に新型コロナウイルス禍から急回復したこともあり、今期は減少傾向にある。ただ、パキスタンやベトナムなど新しい市場でも指名買いの客先が広がっており、フォローを進める。

 染色関連以外のフィルムと産業資材分野の販売は横ばい。新規分野の環境対応機器もフィルム用のインク剥離洗浄機が高い評価を得ている。これらの他分野で培った技術力なども生かし、染色関連機器のユーザーニーズに応えていく。

 生産能力が限界にきていることから、効率化のため、生産管理システムの見直しなどを進める。さらに工場など長期的な設備投資も検討する。

〈染色用にアイコン訴求/自動化や生産性向上に/村田機械〉

 村田機械は自動ワインダーの最新機種「AIcone」(アイコン)を、染色用ソフト巻きにも提案する。今治や尾州など全国の短繊維産地に提案を進めており、導入企業からは自動化や生産性の高さなどの面で好評を得ている。

 アイコンは昨年のITMAミラノで発表された最新機種で、高生産性や省エネを前提に、ソフトの改良でアラームが出にくいのが特徴。多様なパッケージに対応し、紡績用だけでなく、製織工場やニッター、染工場でも導入されている。

 提案を進める染工場から特に注目されているのがオートドッファー機能で、巻き取りが完了したパッケージを取り上げ、下から糸を拾って巻き直す作業を自動で行う点。作業者の負担をさらに減らす機能として、給糸パッケージを一つリザーブして自動で切り替え、2パッケージを連続生産できるタイプ(モデルⅡ)もそろえている。

 均一な巻き取りや高い生産性も特徴で、古い機械からの更新で導入した企業では生産性が2倍近くに高まり、作業時間の大幅な短縮につながっていると言う。

 1台=10錘からで、ドラムトラバースとアームトラバースを混載することもできる。技術サービスにも力を入れており、導入企業は機械の安定稼働と省力化をサポートするIoT総合管理システム「MSS」(ムラテックスマートサポート)を活用することもできる。

〈洛東化成工業/個別対応品開発を強化〉

 酵素技術を活用した繊維加工用薬剤を展開する洛東化成工業(滋賀県大津市)の今期(2025年1月期)は、繊維用の販売量が低調に推移する。綿素材を中心に日本の染色加工量全体が低迷していることの影響を受けている形で、主力の前処理剤は前年比数%の減少で推移している。

 同社は酵素の技術を活用した糊(のり)抜き剤や漂白助剤、柔軟剤、機能加工剤など繊維加工用薬剤を展開する。サステイナビリティーの流れの中で酵素技術への注目が高まっているものの、足元の販売量は日本での染色加工量に準じる形で推移している。特にユーザーが多い綿関連の加工量減少の影響が出ている。

 今後も引き続きサステ商品を軸に、開発に注力する。足元の開発は非繊維関連が増える傾向にあるが、繊維用でも顧客との関係を強めて個別対応品を強化する。近年は加工時のエネルギー使用量削減や性能の向上、化学品を使わず天然の酵素を使って環境負荷低減につなげるなどさまざまな要望が出ており、個別に対応しながら開発を進めていく。