東レのポリエステル短繊維 高付加価値品生産を強化
2024年08月28日 (水曜日)
東レは、全社で取り組む「特定事業・会社の収益改善プロジェクト」(通称ダーウィンプロジェクト)の対象の一つに位置付けるポリエステル短繊維事業に関して、生産体制を再編し、さらなる高付加価値品の開発・生産を強化する。このため愛媛工場(愛媛県松前町)の連続重合・直接紡糸(連重)設備を2025年度下半期(25年10月~26年3月)中に停止する。
ポリエステル短繊維は主力用途であるポリエステル・綿混シャツ地などの需要が新型コロナウイルス禍以降大きく減少する一方、原燃料や副資材、物流のコストが大幅に増加した。中国のポリエステル短繊維メーカーによる低価格販売も加わり、わた値も低迷するなど市況が極めて悪化している。このため東レを含めたポリエステル短繊維メーカーは軒並み採算悪化に見舞われた。
こうした中、東レはダーウィンプロジェクトの一つとして現在の市場構造を見極めながら適正な生産規模を模索すると同時に、生産品種のさらなる高付加価値化を進めることで早期の収益改善と中長期的な成長に向けた構造改革に取り組む。
現在、ポリエステル短繊維は愛媛工場のほか、インドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)、韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、マレーシアのペンファイバー(PFR)で生産している。
このうち、単品大量生産型設備である連重設備は愛媛工場とITSに各1系列、TAKに5系列あるが、既にTAKの1系列は停止している。さらに拠点横断で生産品種の集約などを検討した結果、愛媛工場の連重設備も停止することを決めた。
連重設備の停止で愛媛工場はバッチ式紡糸設備のみとなるが、稼働率は大幅に改善し、コスト競争力も回復する見通しだ。このため現状の生産規模や販売量に変更はなく、販売体制も一切変わらない。特殊品の多品種小ロット生産にも対応できるバッチ式紡糸設備を生かし、愛媛工場は高付加価値わたの開発・生産工場に転換する考えだ。今回の連重停止の決定は、そのための生産基盤強化の一環と位置付ける。
生産体制の最適化と開発・生産品種の高度化を進めることで、ポリエステル短繊維事業でも投下資本利益率(ROIC)などを重視した中長期的な収益構造を構築することを目指す。