繊維ニュース

シキボウ/海外展開と環境配慮で成長/中東向け生地輸出伸びる

2024年08月27日 (火曜日)

 シキボウの繊維部門は、第1四半期(4~6月)業績で営業損失が900万円(前年同期は2億900万円の営業損失)と大幅に改善した。尾﨑友寿上席執行役員繊維部門長は、来期から始まる中期経営計画では「グローバル展開と環境配慮を柱にしていきたい」と話し、両分野での成長を加速。好調な中東民族衣装向け生地輸出を中心に設備投資も進めながら、通期(2025年3月期)での黒字化に全力を尽くす。

 第1四半期の売上高はユニフォーム地の販売苦戦で前年同期とほぼ横ばいだったが、価格改定を進めてきた効果で利益が改善。中東向け生地輸出も「想定以上」に伸びた。GMS向けの婦人服のニット製品や、インバウンド需要でホテル向けに受注増となったリネン資材分野も堅調だった。原糸販売も毛羽コントロール糸「ふわポップ」や連続シルケット糸「フィスコ」といった独自の高付加価値糸の販売を伸ばした。

 中東向け輸出はここ数年好調だった反動が出るとの見通しもあったが、「リピートも取りこぼすことがなく受注できており、新たな開発で攻勢を掛けている」。織布・染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)では増産体制も敷いており、整経機を導入するとともに、スチーマーやベーキング機を更新し、下半期から本格稼働させる。物流センターを含め、省人化に向けた設備投資も検討する。

 パリ五輪では、アラブ首長国連邦の選手団の民族衣装に同社の素材が採用された。中東では民族衣装向け生地での高いブランド力や認知度を生かし、ユニフォームや寝装などの輸出にも取り組む。

 海外戦略を組み立てるグローバル事業推進室を軸に、さまざまなテーマを設定しながら市場拡大に向けた動きを活発化。今年1月に現地法人を設立したベトナムでは縫製OEMだけでなく、現地での糸やテキスタイル販売に乗り出すなど、外、外のビジネスの構築を進める。

 環境配慮では、4月に立ち上げた新事業開発室を中心に、綿素材を再利用した新素材バイオマスプラスチック「コットレジン」の販路開拓に力を入れる。同社の工場から出た裁断くずやC反などを有効利用するもので、ポリプロピレン樹脂と混ぜることで物性が向上し、自動車部品や電化製品などプラスチックが使われる幅広い用途に提案できる。下半期にはシキボウ江南にコットレジンの設備投資を予定する。