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北陸産地/中長期視点で体制整備/対応すべき期限迫る

2024年08月22日 (木曜日)

 北陸では将来を見据えて生産体制を整備する動きがにわかに進みだしている。産地の変化を見据えた動きのほか、繊維機械の状況変化で長く稼働する機械の更新への関心も高まる。(星野公清)

 今年はエアジェット織機84台の更新を実施した丸井織物(石川県中能登町)、製織での新工場建設に続いて仮撚り加工機の大型投資を決めたカジグループ(金沢市)など大きな設備投資も見られる。さらなる競争力強化などを狙う投資が進められるが、一方で環境の変化への対応も重要な課題になる。

 北陸以外の産地も同様だが、日本では各分野で40年ほど前の機械が今も多く稼働している。事業の継続においては老朽化していく設備の維持や更新も重要だが、先が読みにくい中では大きな投資はしにくい。古い機械を使い続け、後継者がいない工場はいずれ廃業も想定される。今後の産地規模縮小が懸念される中で事業をどう継続していくかは大きな課題となっており、ある産地企業は「10年前から分かっていたがずっと後回しにされてきた問題。いよいよ取り組まなければならない時期に来ている」と話す。

 染色用ワインダーなどでは近年、外注先が廃業して内製化のために新しい機械を導入する動きが見られる。事業環境が大きく変化し、人手不足やエネルギー費高騰への対応としても、自動化や省エネ技術が進む新機種への関心が高まっている。

 機械メーカーの変化も更新の検討を促す。長く稼働する機械では、メーカーがその分野から実質的に撤退しているものも多い。例えば石川製作所の仮撚り加工機やレピア織機、村田機械の撚糸機などだが、撤退からの時間経過とともに消耗部品の調達や機械のメンテナンスなどの問題も大きくなる。その機種に詳しい人がメーカーにいなくなる時を間近に控え、他メーカー製での更新が検討される分野もある。

 レピア織機は炭素繊維用や細幅などを除くと日本ではもう生産していないため、ピカノールやイテマなど欧州製への切り替えが進んでおり、「鶴岡工場はイテマ製を中心に更新を進めていく」(松文産業)などの声が聞かれる。仮撚り加工機でも、カジグループのように石川製作所製を廃してTMTマシナリー製の新機種に更新していく動きが出ている。

 仮撚り加工ではピン式でも設備投資が出ており、蝶理はピン仮撚り機の量産機と試験機を北陸の協力工場内に導入することを決めた。ピン式は歴史ある機械でゆっくりと生産する形が多い。仮撚り機の主流が高速のフリクション式に移った中で、ピン式の新しい機械の導入は今後ないとみられた時期もあったが、糸の特徴が再評価されて市場が拡大し、AIKIリオテックやTMTマシナリーなど新台への要望に対応している。

 一方、撚糸機は更新での悩みが大きい分野の一つだ。日本では新しい機械を生産するメーカーがなく、長く稼働する村田機械製を大切に使いながら、海外からを含めて良い状態の中古機が市場に出ないか注視する企業も多い。撚糸機は他の機械に比べると構造が複雑でないため、鉄工所などに依頼して作ることも比較的しやすいとされるが、メンテナンスなどを含めると悩むところ。近年は中国メーカーも候補となり、「将来を見据えて中国製を試験的に導入した」(松文産業)などの動きも出ている。