産資・不織布通信Vol.13/非衣料の重要性如実に/化学繊維ミル消費調査から

2024年08月21日 (水曜日)

 日本で使用される国産、輸入の化学繊維はどのような用途で消費されているのか。その指標となるのが、日本化学繊維協会が取りまとめる化学繊維ミル消費量調査だ。2023年度(23年4月~24年4月)は前年比4.0%減の77万3千トンと2年連続の減少。その中で、家庭・インテリア用、産業資材用を合わせた非衣料用は実に84%にまで高まるなど、化学繊維の国内消費における非衣料の重要性はさらに高まっている。

〈衣料用00年比68%減/全体のわずか16%に〉

 化学繊維ミル消費量は国内の糸・わたメーカーの国内生産(出荷)から輸出量を除き、海外からの糸・わたの輸入量を加えたもの。直接ユーザーである織布・編み立て、産業資材などの消費量を示す指標とされる。

 同協会では会員会社からの報告に基づく統計データと通関統計を基に、2000年から調査を始めた。今回で24回目に当たる。

 23年度の国内のミル消費量は前年度比4・0%減の77万3千トンと2年連続の減少。国産品は5・4%減の35万1千トン、輸入品は2・8%減の42万2千トン。輸入比率は1ポイント上昇し55%となった。

 用途別では衣料用が前年度比11%減の12万4千トン、家庭・インテリア用は3・4%減の39万7千トン、産業資材用は1・2%減の25万2千トンだった。全用途とも減少しているが、衣料用の2桁%減に対し、非衣料用は1桁%減の前半に収まっている。

 これにより、構成比率は衣料用16%、家庭・インテリア用51%、産業資材用33%となり、衣料用が1ポイント下落。産業資材用が1ポイント上昇した。

 前年度比較では変化は小さいが、同調査を始めた00年に比べると大きな変化がある。衣料用の構成比率は34%から16%に下落する一方、家庭・インテリア用は40%から51%、産業資材用は26%から33%に高まり、非衣料用としては66%が84%まで高まっている。

 絶対量で見ても衣料用は00年に比べて68・3%減。家庭・インテリア用は13・6%減、産業資材用は15・1%減。全用途とも落ち込んでいるが、衣料用は実に7割近く消費量が減っている。

〈長繊維不織布が最大/全消費量の25%占める〉

 素材別のミル消費量でも面白い現象がある。最も国内で消費されているのが、スパンボンド不織布(SB)やメルトブロー不織布などで構成する長繊維不織布で、23年はその規模20万トンと消費量全体の25・8%を占める。ちなみにポリエステル長繊維は17万6千トン、ポリエステル短繊維が15万トン、セルロース短繊維は6万9千トン、ナイロン長繊維が6万1千トン、アクリル短繊維は9千トンだ。

 08年度との比較になるが、主要合繊4品種は軒並み大きく消費量が減る中で、長繊維不織布は伸びている。

 この長繊維不織布は家庭・インテリア用で15万8千トン、産業資材用で4万2千トンもあり、家庭・インテリア用の39・8%、産業資材用の16・6%を占めている。しかも、輸入品が全体の70%に当たる14万トン(前年度比7・7%減)、国産品は6万1千トンと輸入比率も高い。

 長繊維不織布はポリエステル製とポリプロピレンに分かれるが、70%強がポリプロピレン製。いわゆる紙おむつを主力とするポリプロピレンSBだ。輸入品は12万トンで、国産品は2万8千トン。日系企業の海外拠点も含めた輸入比率は実に81・2%に達している。

 同調査から浮き彫りになるのは、日本国内で消費される化学繊維は大半が非衣料であり、そのウエートが年々増していること。さらに、家庭インテリア用の40%弱の15万8千トンを長繊維不織布で占めている。産業資材用25万2千トンを合わせると、41万トンと53・0%が産業資材や不織布。

 日本の化学繊維業界が国内販売において、衣料、インテリアや寝具寝装など以外に重点を置くのは自然な流れである。それを同調査は裏付けている。

《トピックス》

〈農業用遮熱シート開発/東レ〉

 東レはビニールハウスに被覆することで農作物の光合成に必要な可視光を透過する一方、ハウス内気温を上昇させる赤外光は遮蔽(しゃへい)する農業用遮熱シートを開発した。

 同シートは機能剤添加のポリエチレン製フラットヤーン(フィルムを短冊状に裁断した糸)とポリエチレン製モノフィラメントの混繊織物。

 2018年から石川県、いしかわ農業総合支援機構、石川県内トマト農家と「新たな遮熱資材を活用した高収益施設園芸モデル構築コンソーシアム」を組織。開発と実証試験を進めてきたが、トマト栽培で既製品に比べ夏季のハウス内の日中平均気温を最大約3℃、最高気温で最大約5℃低下し、トマトの裂果や着果不良など高温障害の発生を軽減することを確認。25年春の本格販売に向け24年7月から農業者へサンプルを提供し、モニター評価を開始した。

〈高目付NP設備を受注/アンドリッツ〉

 オーストリア・アンドリッツグループはこのほど、ベルギーのシオエン・テクニカル・フェルトのリエージュ工場からニードルパンチ不織布(NP)の製造設備「DF―4」一式を受注した。

 同設備はワンステップで高目付品を生産できるもので、2025年第1四半期の稼働開始を予定する。今回、アンドリッツが納入する設備は、各種繊維を使用し、1平方㍍当たり3500㌘以上のNPをワンステップで生産できる。

 各層の剥離も最小限に抑え、最新技術も搭載しており、均一性も高いという。

 通常、こうした高目付品を製造する場合は、複数のNPをオフラインで再度、ニードルパンチ加工を施し複合化する。

 同社によれば、シオエンのリエージュ工場は工業資材用ファブリックの生産に特化している。

〈紙おむつ用弾性糸増やす/暁星TNC〉

 韓国の暁星TNCは2025年2月までにインドとトルコの両工場で、スパンデックス「クレオラ」の紙おむつ用原糸を増強する。両工場で重合から原糸までの設備を拡充。インドとトルコのスパンデックス工場は年産7万3千トンの現有能力を持つが、これを1万1千トン増の8万4千トンに拡大する。インドや欧州、中東、アフリカなどのグローバル市場で急増する紙おむつ用スパンデックスの需要に対応する。

 同社は韓国の亀尾、中国の珠海、嘉興などで紙おむつ用スパンデックスを生産する。「クレオラは韓国、中国、インド、ベトナム、トルクメニスタン、ブラジルのグローバル生産ネットワークを基盤に他の追随を許さない世界ナンバーワンの地位を維持しており、紙おむつ用も安定したサプライチェーンと品質で世界市場をリードし続ける」とする。