繊維製品 盛り上がるインバウンド需要

2024年08月21日 (水曜日)

 日本政府観光局が発表した訪日外国人数(推計値)は、今年上半期の累計で1777万7200人となり、これまで最高だった2019年を上回るペースとなっている。インバウンド需要の盛り上がりは、ユニフォームやタオル、雑貨、アパレル製品など一部に恩恵をもたらしつつある。

 観光庁が7月に発表した宿泊旅行統計調査によると、6月の延べ宿泊者数は5039万人で前年同月を6・3%上回った。日本人延べ宿泊者数は物価高で停滞しているものの、外国人は19年比2桁%の高い伸びとなっている。

 そのような宿泊や飲食などサービスに関連する製品の動きは堅調だ。オフィスウエア製造卸のセロリー(岡山市)は、ホテル向けユニフォームの販売が伸長。国内工場の生産ラインを一時的にオフィスウエアからサービスウエアに切り替えた。

 オフィスウエア製造卸のジョア(同)もホテル向けにユニフォームの販売を拡大。特に受け付けやフロントで着用される高価格帯の華やかなユニフォームが売れていると言う。

 シキボウは生活資材事業で、ホテル向けのシーツなどリネン需要の拡大を受け、今春中国の湖州敷島福紡織品で新しいインクジェット捺染機を導入した。「細かいロットやQRに対応する」ことで今後も拡大が期待されるリネン需要を取り込む。

 インバウンド需要の拡大は日本製商品を外国人に認知してもらう絶好の機会でもある。タオル製造のコンテックス(愛媛県今治市)は、首都圏の和雑貨ショップや文房具店、地方の土産物屋でプリント柄のタオル手拭い「布ごよみ」の購買が増えている。

 今治タオル工業組合の「今治タオル」ブランドのオフィシャルショップ青山や今治産地では外国人の立ち寄りも増えてきた。「間違いなく日本製タオルを買える店としての支持もある」(産地関係者)ようだ。

 タオル製造卸の犬飼タオル(愛知県岩倉市)では、富士山など日本らしさを強調したデザインのタオルの受注が急増している。

下札の英語表記も

 富士吉田、西桂といった山梨県郡内産地では、外国人観光客向けお土産として各社のファクトリーブランドが売れている。売れ筋は織物生地を使ったノートやハンカチなどの小物類がメイン。販売場所は河口湖駅などが中心となる。

 アパレル製品でもオンワード樫山が展開する紳士服ブランド「ジョセフ・アブード」とアウトドアラインの「ジョセフ・アブード・マウンテン」のインバウンド消費が好調。米国ブランドなので、欧米人がパーカやジャケットを購入するケースが多いという。特にインバウンド購入率が高いのは大阪や京都、東京の店舗。今後外国人が買いやすいように商品の下札の英語表記を増やすことも検討する。

 香港や中国本土、米国でもセレクトショップを展開しているTOKYO BASE(東京都港区)では、海外でも認知度の高いブランドが好評で、「各国の気候に合ったシンプルで上質な物が売れている」とともに「総じて日本製の生地のものは好評」と言う。そうしたインバウンド効果もあり、国内店頭売上高は今期2月以降5カ月連続で前年同月比10%超を記録した。7月はセールを8月に先送りしたため前年を割ったが、その影響がない月前半は2桁%増だった。