デニムの 濃い世界  鴨川祐司社長に聞く(前)

2024年08月16日 (金曜日)

微生物の力で洗い加工

 デニムとジーンズの産地である三備地区で、それぞれの個性を決定付ける要素を探る不定期連載。今回は、加工薬剤製造卸のユケンケミカル(愛媛県今治市)の鴨川祐司社長に「加工によって生まれる個性」を聞いた。

                  ◇

  ――デニムの違いはどこから生まれるのでしょうか。

 ジーンズの加工は元々、はき古されたビンテージジーンズの表情に近づけようと開発されたものです。しかし今では、ジーンズのさまざまな個性を引き出す重要な要素です。

 加工の基本となるのが「バイオ・ストーン・ブリーチ」です。その工程はまず、糊(のり)抜きから始まります。デニムを織る時の安定性を高めるためサイジング機で経糸に糊付けしています。これを取り除く必要があります。糊の種類は、小麦やトウモロコシから抽出されたでんぷんが主に使われます。

 デッドストックのデニムからカビの臭いがするのは、このでんぷん由来の糊に発生したカビによるものです。でんぷんの分子を分解する「アミラーゼ」という微生物で分解します。

 でんぷん由来の糊だけでは経糸の強度が不足する場合は、半合成糊のCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)や、クラレが世界に先がけて量産技術を確立したポリビニルアルコール樹脂の合成糊「ポバール」などが使われています。それぞれに適した糊抜き剤が使われます。

  ――微生物の力で加工しているのは驚きです。

 次の工程が、バイオです。こちらも微生物の力を借りて加工します。「セルラーゼ」という酵素で、綿を構成するセルロースを分解します。「微生物が毛羽を食べる」とイメージすると分かりやすいかもしれません。

 セルラーゼは元々、レーヨンや「テンセル」といった再生繊維が、染める際に釜の中でこすれて毛羽立つのを解消するために使われていました。デニムに使った場合も表面に艶が生まれサラリとした手触りになります。内側の繊維にも作用するため、柔らかい風合いになります。