繊維ニュース

山陽染工 製品新ブランドを柱に

2024年08月15日 (木曜日)

 染色加工の山陽染工(広島県福山市)は、自社製品ブランドの立ち上げなどの新事業に加え、以前から進めてきた海外向けの販路開拓に注力する。また、加工の開発などで産地内外での連携も進める。

 主力とする切り売り向けの加工などが低調で、今期(2025年3月期)に入っては減収基調で推移する。そんな中、戸板一平常務は「新規事業と海外向けビジネスを伸ばしていく」と話す。

 新規事業の一つが、独自技術の「段落ち抜染」を生かした製品ブランド「バッセンワークス」に続く新たなブランドの立ち上げだ。生地や加工に焦点を当てた、男女問わず着用できるジェンダーレスデザインのブランドとなる。東京のデザイナーと組んで来春夏シーズンから展開する。

 同社は「J∞クオリティー・ファクトリーブランド・プロジェクト」(JQFBP)に参画し、今年1月にイタリア・フィレンツェで開催されたメンズ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」に出展。この新ブランドを出品し、一部でビジネスにも結び付いた。

 卸売りと電子商取引(EC)で展開する。今月にはホームページを立ち上げ、営業活動を本格的に始める。また、東京都内での展示会の開催も予定する。同ブランドを事業の柱に育てるとともに、「加工事業との相乗効果も狙っていきたい」(戸板常務)としている。

加工開発連携強化へ

 山陽染工は加工事業で海外への販路開拓を模索する。これまで「ミラノ・ウニカ」といった海外展に出展しながら販路を広げてきた。今年5月には、中国で開かれたデニム関連の展示会「キングピン」に出展。現地のパートナーと共に出展し、「具体的な商談になってきた」と言う。今後は「国によって戦略を変えながら開拓を進める」ほか、他の海外展への出展も検討する。

 部分的に色の抜け具合を変えることで濃淡を表現する独自技術を生かした「バッセンワークス」では、来年5月に福山市で開催されるバラに関する国際会議「第20回世界バラ会議福山大会2025」に向けて製品を作る。英国のリバティ社と協業し、3タイプのバラ柄のデニムを開発。この生地で、シャツやトートバッグなどを作る予定だ。

 加工の開発では、産地内外との連携を強化。このほど、和歌山県の工場と連携し、起毛生地を開発した。ナッピング起毛により、生地表面上に玉状の毛羽を付与した生地となる。もう一つが、毛の密度を増やすことでベロア風の起毛を施した生地だ。いずれも綿100%となる。戸板常務は「今後も“工場またぎ”の連携は進めていきたい」と話す。

 加工以外の連携も進める。企業が集まり、新たな環境技術の開発や働きやすい職場作りに向けた取り組みなどを共有、連携していく福山市の取り組み「グリーンなものづくり企業プラットフォーム」に参画する。今年に市内で不要なデニム製品を回収し、再資源化するプロジェクト(PJ)に関わった。今後は同社が旗振り役となり、縫製工場など繊維関連事業者から出る残反などを回収し、アップサイクルするPJに取り組む。