合繊メーカー4~6月期 市況回復で業績改善
2024年08月13日 (火曜日)
合繊メーカーの2024年4~6月期決算は、フィルムや樹脂など化学工業品の市況が回復傾向となったことを背景に軒並み大幅な増収増益となった。繊維関連事業も増益や黒字転換が相次ぐ。価格改定断行による採算改善や不採算分野の縮小など構造改革の成果が現れている。
今期から会計基準をIFRSに変更した帝人は、苦戦していたアラミド事業と複合成形材料事業で収益性改善策を継続したことで、マテリアルセグメントは黒字転換した。生産性向上と不採算品の縮小、高付加価値品の拡販が成果を上げている。繊維・製品セグメントも増収増益と堅調。衣料繊維は中国向けテキスタイル・衣料品、国内向け衣料品の販売が好調だった。産業資材は、水処理フィルター向けポリエステル短繊維、人工皮革、生活雑貨がけん引した。衣料、産資ともに価格改定による利益率改善が進んだ。
同じくIFRSを採用している東レも全社ベースと繊維関連セグメントともに増収増益となるなど地力の強さが際立つ。繊維セグメントは、衣料用途で海外品との競争激化など環境が厳しい中でも総じて堅調に推移するなど健闘。産資用途も自動車関連が需要回復基調にある。ただ、国内自動車メーカーの減産や中国の電気自動車(EV)市場の競争激化の影響を受けた。炭素繊維複合材料セグメントも増収・大幅増益。航空宇宙用途が順調に回復しているほか、風力発電翼用途も需要回復傾向にある。
東洋紡は、環境・機能材と機能繊維・商事の両セグメントがともに黒字転換した。環境・機能材の環境・ファイバー事業は高分子量ポリエチレン繊維「ツヌーガ」が耐切創手袋用途で需要が回復。不織布も自動車用途の需要が回復した。機能繊維・商事は衣料繊維事業の中東向け生地販売が拡大し、国内生産拠点集約など構造改革で採算が回復した。エアバッグ基布事業も価格改定を進めたことで採算が改善しつつある。
旭化成のマテリアルセグメントも大幅増益。このうち繊維関連を含むモビリティ&インダストリアル事業は売上高1042億円(前年同期比15・6%増)、営業利益56億円(85・5%増)だった。自動車内装材は一過性要因で販売量こそ減少したが価格改定や円安による交易条件改善で増益だった。
ライフイノベーション事業も主力製品の販売が堅調に推移したことで売上高994億円(10・1%増)、営業利益124億円(173・6%増)と大幅増益だった。
ユニチカは全社ベースで黒字転換した。機能資材セグメントも販売数量回復とコスト削減で赤字幅が縮小している。このうち不織布事業は販売量回復で増収となったが、コストアップの影響が大きく利益で苦戦。産業用繊維事業は土木や水産用途が苦戦したが、フィルター用途は好調、しかしコストアップの影響が大きく利益面は苦戦する。繊維セグメントも赤字が拡大した。衣料繊維事業はユニフォームが堅調も他の用途は総じて勢いがない。産資事業は価格改定の効果をコストアップが上回ったことで採算が悪化した。