特集 安心・安全(6)/検査機関/安心・安全を担保する検査/カケン/ボーケン/QTEC

2024年08月09日 (金曜日)

 難燃や高視認、冷却・冷感性など、命を守る上で重要な機能性が本当に備わっているかどうかを知る上で検査機関が果たす役割は大きい。機能や効果をさまざまな数値によって可視化することで説得力を持たせることもできる。日々、進化しつつある素材や加工に対し、高度な検査をしていくことによって、多くの人々の安心、安全を担保することができる。

〈防護関連で幅広い価値提供/唯一のメニューもそろう/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、東京事業所川口本所で防護服に関する試験を行っている。カケンにしかできない試験をそろえるほか、物理防護、化学防護、耐熱防護、生物防護の全てに応じられるのが強みだ。安心・安全に欠かせない防護服・防護装備分野に幅広い価値を提供している。

 4月に労働安全衛生規則等の一部を改正する省令が施行されたこともあり、化学防護服に関する試験や問い合わせが増えている。カケンではJIS T8030で規定された「防護服材料の耐透過性試験」、JIS T8031の「防護服材料の加圧下における耐液体浸透性試験」などを用意する。

 物理防護では、手袋関連で突刺抵抗性試験や耐切創性試験(Coupe testとTDM test)に安定した依頼があると言う。また、手持ちチェーンソー使用者のための脚部防護服の性能試験はカケンにしかできないこともあって今後注目度が高まる可能性がある。

 熱防護では、熱伝達性の各種試験(放射熱ばく露、火炎ばく露、接触熱)や耐炎性試験(火炎伝ぱ性)、熱風循環炉による耐熱性試験などに応じる。高視認性では蛍光色の測色や再帰性反射材の反射輝度に関する試験、生物防護では人工血液バリア性・ウイルスバリア性試験などを行う。

 日本消防服装・装備協会は、「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」やISOの諸企画の品質確保を目的に自主管理制度を定めている。その試験所として7月に指定された。安心・安全に貢献する試験機関としてさまざまな広がりを見せており、異業種からの問い合わせも増えている。

〈カスタマイズ試験も充実/冷却で実践的な機能評価/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、日本産業規格(JIS)や国際標準規格(ISO)など規格に基づく機能性試験に加えて、製品特性に応じたカスタマイズ試験を充実させている。最近では冷感や冷却といった機能を対象に実践的な評価方法を開発した。

 さまざまな冷却・冷感機能素材・製品が登場したことで実際の着用状況に近い形での性能評価を求める声は多い。これに応えてボーケンが開発したのが電動ファン付き(EF)ウエアの機能性試験。提携するユニチカガーメンテック(UGT)と共同開発したもので、対象ウエアを発汗サーマルマネキンに着せ、ファンのオンとオフそれぞれの放熱量を評価する。比較したい製品状態と試料の放熱量が同等となる比較状態の想定環境温度と想定環境温度差も算定できるため、EFウエア着用によって比較状態と比べ何℃の冷却効果が期待できるのかの提示も可能だ。

 インナー分野で依頼が増えているのが水分蒸発の際に周囲の熱を奪う気化冷却効果を測定する試験。放熱量を測定するもので、官能試験と相関関係を算出することで実際に冷たいと感じられる目安となる「冷感指数」を算出できる。

 そのほか、持続冷感効果試験方法も開発している。接触冷感性試験方法として一般的な最大熱吸収速度(Q―MAX値)測定は瞬間的な冷感性を計測するのに対し、新試験方法は体温を想定した熱板を接触させ、試料の表面温度の変化を測定することで持続的な冷感性を定量的に測定できる。

 冷感・冷却関連以外では、繊維製品上の花粉・ダニ等由来タンパク質の低減活性評価試験の依頼が増加した。現在、対象となるタンパク質の種類の拡大やプラスチックなど非多孔質物質への応用などの開発が進む。

〈暑熱対策アイテムに対応/独自試験で要望に応える/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、安心・安全に関連するさまざまな試験・検査に対応しているが、その一翼を担うのが福井試験センターだ。同試験センターでは、日傘やカーテンなどの暑熱対策として注目を集めるアイテムの試験依頼が増えている。独自の試験もそろえ、顧客の要望に応える。

 近年の夏は猛暑が恒常化し、2023年は統計を取り始めてから最も暑い夏といわれた。暑熱対策は必要不可欠となっているが、人々を熱や紫外線から守るのが日傘だ。女性だけでなく、男性にも浸透しつつあり、市場は拡大傾向。QTECも傘の遮熱性を評価する試験を提供し、安心・安全に貢献する。

 遮熱性試験にはJIS L1951があるが、これは生地(傘地や服地など)で行う。QTECでは生地だけではなく、製品での試験(傘の遮熱性)が可能で、消費者が使用する製品そのものが持つ性能を評価できる。試料と測定部の間を完全に開放された空間とし、無用な熱がこもらないような工夫も施す。

 また、一般的には長傘と折り畳み傘では利用時に人体までの距離が異なる場合がある。種類ごとに試料と測定位置の距離を設定しているため、試験品の特徴をより捉えることができる。顧客の要望があれば、マネキンを使ったサーモグラフィー撮影にも応じる。

 カーテンの断熱(遮熱)性試験では、屋外からの日射熱などを遮る性能を評価する。試験槽(断熱材製のボックス)を用いるなど、使用状況に近い形で行う。カーテンに加え、ロールスクリーンやサンシェードなどに適用することもできる。