アイ.エス.テイ “概念変える”ウール開発
2024年08月05日 (月曜日)
高機能素材製造のアイ.エス.テイ(IST、大津市)はこのほど、原料への加工技術で「これまでの概念を変える」新たなウール素材「プラチナウール」を開発した。
7月にイタリアで開かれた国際生地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)で初めて披露。「サンプルを手に取った来場者の顔の表情が変わるほどで、強い手応えを感じた」として、国内外のトップブランドに向け市場開拓に乗り出す。
プラチナウールは10年前に研究開発を始め、2年前から安定した品質で生産できるようになってきた。自社開発の設備で独自の加工技術(特許取得)を駆使し、繊維一本一本の表面を磨き上げる手法で生産する。
素材の良さをそのままに、欠点であるチクチク感を排除。繊維径が極めて細く、優しい肌触りとともに、滑らかな表面により、毛玉ができにくい。艶やかな光沢感がありながら触るとひんやりとすることから「ウールでもカシミヤでもない、全く新しい」素材感を出せ、秋冬だけでなく春夏向けでも提案ができる。
MUでは欧米の市場開拓で協業する、イタリア・ビエラ地区にあるニットメーカーCMテスティのブースを通じて出展。ISTは航空・宇宙分野で使われるポリマー材料の製造など、もともと異業種から繊維業に参入し、「新たな視点から素材開発ができるバックボーンがある」。さらに欧州では日本以上に環境配慮に対する意識の高まりもあって、MUでは来場者から「テクノロジーに対する期待感も感じた」と言う。
「薄手であれば羽衣のようなさらっとしてふわっとした」重さを感じない質感に加え、ごわごわした感触になりやすい圧縮ジャージーでもしなやかで上質感のある生地に仕上がる。価格帯は1㌔1万3千~1万5千円ほどで「まずはトップオブトップのゾーン」へ販路開拓を進める。
商標を取得し、海外でも「ISTプラチナウール」として取得を進める。ウールマークや、責任あるウールの調達に関する自発的な国際基準レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)の認証も取得した。
糸は24、58、80、100(200双)毛番手を軸に展開し、協力工場を通じてジャージーや織物の供給もできる。2026年には年間で100㌧の生産を計画、5~10年後にはプラチナウール全体で売上高50億円を目指す。
同社は03年に梳毛紡績、毛織物製造の日興毛織(岐阜県羽島市)の事業を継承。羽島事業所(旧日興テキスタイル)でトップ工程から梳毛紡績までの一貫生産体制を構築している。紡績技術を駆使し、見た目以上の軽量感のある糸「カールカール」は国内だけでなく、中国や東南アジアへも輸出している。