繊維ニュース

合繊スポーツ素材 環境や機能、風合い強化

2024年07月30日 (火曜日)

 合繊メーカーや素材メーカー系商社は、環境対応や機能性、質感・風合い、暑熱対策などに重点を置いた素材をスポーツ・アウトドアウエア分野に投入する。

スポーツ・アウトドア市場は盛り上がりを欠いた状態が続いているが、ニーズに即した開発・提案の強化で需要掘り起こしを図る。

 スポーツ・アウトドア市場の2023年度は、欧州を中心にアパレルの生産調整が進んだことなどから勢いが感じられなかった。全般的に厳しさは続くものの、回復基調も見られ、24年4~6月の素材販売で「前年の同じ期間を上回っている」「当初予定通りに推移している」との声も聞こえるようになってきた。

 そうした中で各社が継続的に力を入れているのが、環境対応や機能付与、新質感・風合いを加味した商品の開発・提案だ。25秋冬物から26春夏物に向けて新開発品を市場投入する動きも目立ってきた。夏物では、近年の暑熱に対応する素材も高度化が進む。

 帝人フロンティアは、25秋冬物で中空8フィン断面ポリエステル紡績糸「オクタsf」を使ったニットと織物を打ち出す。細繊度中空断面によるソフトな肌触りや軽量性、吸水速乾性、保温性などの機能を持つ。ウールやリヨセルと複合した生地の販売から始め、スポーツだけでなくファッション分野にも広げる。

 東レは、軽量の「カルイシ」やC0撥水(はっすい)に「キューダスXT」などを訴求する。独自の改造設備で編み立てるカルイシは、同じかさの生地と比べて約半分の重さ。繊維が抜けにくいのも特徴だ。キューダスXTは、耐久性に優れ、50回洗濯後で80ポイント以上(ブンデスマン法)を誇る。

 旭化成アドバンスは、欧州で強化が進む化学物質規制への対応を強化している。その一環として、有機フッ素化合物(PFAS)とジメチルホルムアミド(DMF)を使用しない透湿防水生地「インパクトΣ」を打ち出す。既存の透湿防水生地と同等の透湿性と耐水圧を実現している。

 東洋紡せんいは、アパレルが進める“一格上”の商品企画に応じた素材を提案する。UVカット機能編み地「レイブロック」などがその一つだが、スピンドル方式仮撚り糸によるハイゲージ編み地であり、一般的な生地と比べて優れた風合いが表現できる。

 ユニチカトレーディングは、吸放湿ナイロン「ハイグラ」の提案を強化する。ナイロンの特性や質感を維持しながら蒸れ感やべとつきを抑え、さらっとした着心地を実現する。遮熱機能と融合したタイプや蓄熱保温と組み合わせたタイプもそろえ、これらを適正な価格で販売する。