特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(7)/強み発揮し、生き残る/ショーワ/丸進工業/ワン・エニー/菱友商事/荻野製織/小橋

2024年07月29日 (月曜日)

〈社内分析進め生地拡販へ/ショーワ〉

 ショーワ(岡山県倉敷市)は、国内外での販路開拓に力を入れる。

 このほど、岡山県産業振興財団(岡山市)の2024年度中堅支援事業に採択された。デニムなどの生地拡販のための企画提案、商品開発、販路開拓を強化するマーケティングや、デジタル技術で企業を変革するDX活用への支援を受ける。売り上げ構成比や販売先などの分析を進めており、「うまく活用しながら、売り上げ、利益につなげていきたい」(髙杉哲朗統括本部長)。

 生地開発にも注力。このほど開発した、浅野撚糸(岐阜県安八町)の特殊撚糸「スーパーゼロ」使いの生地「エアーズ」は引き合いが好調。軽くて柔らかく、ダンガリーやツイルなどの生地をそろえる。今後は色展開を増やして販売を広げる。

 また、海外展にも出展しながら海外での販路開拓も進める。

〈日本の帆布残していく/丸進工業〉

 丸進工業(岡山県倉敷市)は今年、織機のメンテナンスを進めながら生産体制を整える。武鑓篤志社長は「付加価値のある帆布を作る工場として、日本の帆布を残していく」と話す。

 同社は、昨年帆布事業を停止したタケヤリ(同)の重布向けピカノール製シャトル織機3台と、レピア織機2台を移設した。今後は工場内の織機のメンテナンスを進めながら、丸進工業がこれまで得意としていた中厚地の帆布に加え、厚地の帆布も生産できる体制を整える。

 同社も出資する倉敷帆布(同)で展開する帆布製品ブランド、「倉敷帆布」の販売にも注力する。同市内の観光地、倉敷美観地区内の直営店はインバウンドの回復などもあり好調。

 4月には、同地区内の観光施設「ログイン倉敷」に3店舗目となる店舗も開いた。通販サイトなども絡めながら、拡販を目指す。

〈海外売上比率8割に/ワン・エニー〉

 ワン・エニー(岡山市)は欧州を中心とした輸出を増やしている。新型コロナウイルス禍前に4割ほどだった海外売上高比率は、現在8割を占めるまでになった。

 コロナ禍でも海外営業を進めるなど「種まきをしてきたことが生きてきた」(清大輔社長)。また、糸の開発から携わるなど「世にない生地を作ってきた」ことに加え、円安が進行していることなども追い風となっている。2024年6月期は増収を達成した。

 今後も海外での開拓を進める。展示会にも出展。今年、デニム関連見本市の「デニム・プルミエール・ヴィジョン」に出展したが、今後も3~4回出展しながら感触をつかむ。

 これまでも、超長綿の海島綿を使ったデニムなど、特徴ある生地を開発してきた同社。清社長は「今後もチャレンジングなモノ作りを進めていく」と話す。

〈環境配慮型生地を拡充/菱友商事〉

 菱友商事(広島県福山市)は、環境配慮型の素材を採用した生地を拡充している。

 花田充民社長は「生地に採用する綿をオーガニックコットンに置き換えられるか聞かれることが増えた」と話す。そのため、チノやバックサテン、カツラギ生地などでオーガニックコットンの採用を充実させた。

 反毛わたを使った商品も開発する。1970年代の米軍のミリタリーウエア「OG―507」を参考にした「~リクロス~T/Cツイル」は、再生ポリエステル、綿には通常は廃棄される同社の生機を反毛してできたわたを10%以上採用した生地となる。「エコマーク」も採用。同素材のキャンバス生地も用意する。

 紡績工程で発生する落ちわたを採用した、粗野感のあるデニムも作るなど、今後も企画力を生かしてニーズに合った生地を開発する。

〈独自の帆布生地発信/荻野製織〉

 荻野製織(岡山県倉敷市)は単独展示会を開きながら、帆布生地の発信に力を入れている。

 6月に東京と大阪で展示会を開いた。「生地に触れることができ、見やすい展示にした」と荻野尚也社長。展示会で評価が高かったのは、グローバル・リサイクルド・スタンダード(GRS)認証取得の再生ポリエステルを採用した生地「エコマックス」だ。合繊使いながらも、天然素材のようなメランジ感が特徴となる。

 岡山県織物染色工業協同組合による安心、安全な加工ブランド「倉敷染」を採用する高密度のセルビッヂキャンバス生地のほか、柿渋染め生地など、新開発のユニークな生地も訴求した。

 今年3月には発信の場として、本社に商談スペースとショールームを設置した。展示会と同じように生地を展示しながら訴求する。

〈設備導入で生産体制整備/小橋〉

 小橋(岡山県倉敷市)は2024年5月期、増収を確保した。上半期に受注量が堅調だったことに加え、「価格改定も若干貢献した」(小橋俊治社長)。

 一方、受注は「今年の3月ごろから減速基調で、5、6月は苦戦した」とし、「この先もなかなか読みにくい」と話す。

 今期は顧客の要望に応えるために設備の導入など、生産体制などを整える。最近は要望において「だんだんと撚りがきつくなっているケースが増えている」。撚り回数が増えることから、生産時間も長くなるため、これへの対応策を模索する。

 設備面では、稼働していなかった設備を整理。村田機械のダブルツイスター363型1台を導入し、先月から稼働させている。また、同社製の368型2台の設置も行い、稼働させる計画だ。