特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(4)/商社編 商工連携で日本のモノ作り残す/瀧定名古屋/スタイレム瀧定大阪/一村産業/旭化成アドバンス
2024年07月29日 (月曜日)
〈PLA使い尾州と商品化/瀧定名古屋〉
瀧定名古屋はポリ乳酸(PLA)繊維「プラックス」使いの生地提案に力を入れている。つながりの深い尾州の産地企業と共同で商品化を進め、今年から本格販売を始めた。海外販売も視野に入れており、プラックスを軸に尾州の魅力をアピールする機会も狙う。
プラックスは改質PLAコンパウンドを開発・販売するバイオワークス(京都府精華町)と共同で開発した。環境性能に加えて、高い染色性や消臭・抗菌といった機能性が特徴。瀧定名古屋はプラックスを使った衣料向けの織物や編み地を備蓄販売する。
商品化に向けては尾州の宮田毛織工業、中伝毛織、藤井整絨の3社と協力し、量産できるまでに2年を要した。特に染色堅ろう度や染色性が問題となったが、試行錯誤を繰り返し商品化にこぎ着けた。サンプルを含めて200マーク開発し、うち20マークを商品として展開する。
生地はプラックス100%のほかに、ウール混や綿混をそろえ、今年の販売以降、大手アパレルなどに採用が決まり始めている。「プルミエール・ヴィジョン・パリ25秋冬(2~4日)」へも継続出展し海外販売も見据える。プラックスという革新的な素材を軸に尾州の価値を世界へ発信する考えだ。
〈あの手この手でLT短縮/スタイレム瀧定大阪〉
「仕入れでは広さよりも深さを重視していく」と、スタイレム瀧定大阪で産地企業や染色加工場との取り組み型ビジネス構築の中心的役割を担うテキスタイルSCM推進部の飯田悟司部長は話す。世界をうならせることのできる日本ならではのモノ作りを進める企業との取り組みを太くしていく。
同部が活動を開始したのは2021年2月。以来、日本全国の産地や染色加工場を直接・間接で行脚し、主にリードタイム(LT)の短縮をテーマに取り組みを進めてきた。とりわけ海外ブランドからは日本の生地のLTが契約成立のネックになっているからだ。「世界の納期リクエストに応える」ことを最優先のテーマに「あの手この手」でLT短縮に向けた施策を進めている。
例えば売れ筋を予測して加工スペースを事前に確保しておくことがその一つ。もし発注に至らなければ違約金も支払う。広範かつリアルタイムの情報を収集することにより、産地をまたいだ生産の采配や融通もできるようになってきた。薬剤メーカーとの協業も始めており、品質向上に一役買っていると言う。
「日本ならでは」「スタイレムならでは」を追求しながら各種認証の取得も商工一体で進めている。
〈差別化品の開発継続/一村産業〉
一村産業の繊維事業の4~6月は、前年同期比増収増益となった。輸出がけん引役で、中東向けが好調なほか、欧州のライフスタイルなども堅調だった。一方で国内向けは低調で、ユニフォームが苦戦したほか、ライフスタイルも暖冬の影響を受けた。
中東向けはポリエステル短繊維織物を柱に拡大し、長繊維使いやニットなど新商品の打ち出しも進んだ。要望に応じて七つ以上の機能をカスタマイズできる「クワトロセブン」への引き合いが増えるなどポリエステル紡績糸使いの多角化も着実に進んでいる。
国内向けの低迷は、子会社である創和テキスタイルが能登半島地震で被災した影響も大きかったが、6月に完全復旧したことで下半期は回復に向かう見通し。
モノ作りでは、今後も引き続き国内産地との取り組みを最重視する。産地企業にオーダーを確実に置いていくため、差別化品の開発を継続するとともに、最終出口の創出に注力していく。
産地品の販売先をさらに拡大するため、「生産場の見える化」にも注力。産地で生産した商品であることを示すタグの使用のほか、同社の顧客に生産チームの魅力を伝える取り組みも強化していく。
〈日本の強み生かす/旭化成アドバンス〉
旭化成アドバンスの繊維事業の4~6月は、好調だった前年同期並みとなった。繊維資材が堅調で、衣料分野も底堅く推移した。衣料分野ではファッションアウター用が安定しており、裏地や製品も手堅く、中東向けなども伸びた。7~9月は、これまで好調だった学販用のニットに一服感が出るなど市場環境は厳しくなると見通す。
下半期(10~3月)は、独自商材に注力して拡販を狙う。10月から、旭化成が展開していたキュプラ繊維「ベンベルグ」の裏地向け生地製造販売事業が、旭化成アドバンスに移管されることも拡大材料の一つとなる。
アウター用途では、ベンベルグが品薄になる中で、ナイロン使いやポリウレタン混などベンベルグ以外での生地開発を強化してきた。今期はその効果も出てきており、引き続き拡大を図る。ジアセテートも引き続き堅調で、品薄な状況が続いている。
今後も国内産地との取り組みを引き続き重視し、日本の強みを生かしたテキスタイルをグローバルに拡大していく。これまでも産地の協力工場への設備投資を行ってきたが、今後も染色加工でのボトルネック解消など「効果を見ながら、要所要所で設備投資を検討していく」とする。