特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(3)/商社編 商工連携で日本のモノ作り残す/豊島/ヤギグループの山弥織物/蝶理/澤村

2024年07月29日 (月曜日)

〈豊富なサステ、合繊素材/豊島〉

 豊島は天然繊維から合繊までの幅広い糸や生地を供給し顧客の要望に応える。環境配慮などサステイナビリティーを意識した商品を数多く展開するほか、近年では機能性を付与した合繊の提案にも力を入れている。

 天然繊維は世界中に敷いたネットワークから綿やウールを中心にさまざまな商材をそろえる。一方で世界的に見ても合繊の流通量が多いことから、ここ数年は合繊素材の拡充も進め豊富な商材を展開する。

 モダクリル繊維を使用した難燃素材「アグニノ」や、親水性のナイロン冷却糸「オプティマクール」をそろえる。最近では一般的なポリエステルの約2倍の強度を持つ超高強力素材「グランボンド」の展開も始めた。

 サステ商材は業界内でいち早く手掛けてきた。35年前から展開する植物由来のセルロース繊維「テンセル」を皮切りに、来年20周年を迎えるオーガニック綿の普及プロジェクト「オーガビッツ」など、歴史は長い。

 ほかにも食品残さを染料に活用する「フードテキスタイル」に加え、トレーサブルなトルコ産オーガニック綿糸「トゥルーコットン」や、再生ウール素材「サークルウール」など多彩なサステ商材をそろえる。

〈撚糸供給で製造支える/ヤギグループの山弥織物〉

 撚糸加工・販売の山弥織物(浜松市)は、強撚糸の備蓄販売を基盤とした原料からの提案と糸加工を得意とする。天然繊維を中心に取り扱い、オーガニック認証の取得にも力を注ぐ。

 原糸(各種撚糸加工品)の販売と受託加工を主力事業とし、単糸追撚、双糸、多撚糸、双糸ボイル、交撚、カバーリングなどを手掛ける。海外にはない撚糸機も使用し、〝メード・イン・ジャパン〟にこだわったモノ作りを守り続ける。

 こうした技術力を駆使して作り出す原糸は、アパレル分野では主に品質を求めるラグジュアリーブランドに供給される。近年は農業分野にも用途を広げ、誘引ロープやフラワーネットといった自社製品を提案している。

 同社は2017年、ヤギグループに加わった。以来、業務の専門性を生かし、グループの原料の供給源を担ってきた。同グループの生地商社のイチメン(東京都渋谷区)とは共同で素材開発に取り組む。

 原料供給の面から織物・ニット製造を支えるという意識は、地元の遠州産地に対しても変わらず、「遠州産地未来会議」の活動にも積極的に参加している。

 小川佳久社長は「各産地で完結できない課題が増えた今、国内産地が連携する動きを生む必要がある」と話す。

〈ブランディングを強化/蝶理〉

 蝶理は、日本のテキスタイル産地の強みを生かした商品を国内外で拡販していく。製品事業とも連携し、スポーツやファッション、ユニフォームなどさまざまな用途で北陸以外を含めた日本製生地を拡大していく。

 産地品の出口創出に向け、産地企業との開発とともにブランディングの強化を重視する。このほど発表したサーフィン日本代表とのスポンサー契約締結もその一つで、産地の魅力を国内外に伝える新しい仕掛けを行っていく。

 安定した生産体制を構築するため、産地企業への設備面での支援も行う。北陸ではこのほど新しいピン仮撚り機2台と試作機1台を協力工場内に導入することを決めた。

 ピン仮撚り糸の独自ブランド「SPX」は、ストレッチ性や膨らみ感など最新のフリクション式にはない特徴が再評価されて販売を伸ばしている。試作機も導入して開発を強化し、国内外での拡販を狙う。今後はピン仮撚り機以外でも、設備投資を検討していく。

 綿糸など天然繊維に強いグループ会社STX(東京都千代田区)との協業にも力を入れる。経糸にSTX品、緯糸に蝶理が扱う糸を使った織物開発などが進んでいるほか、機能性ポリエステル短繊維を使った紡績糸「スパンラボ」の共同展開も始まっている。

〈売る力身に付け共存/澤村〉

 トリコットを主力とする澤村(大阪市中央区)は、2015年の北陸支店(福井市)開設以来、同産地との取り組みを広く深く進めている。それまではほぼなかった同産地製の丸編み地の取り扱いが増えたのは支店開設の成果の一つだ。

 同社の生地仕入れは北陸の合繊トリコットと和歌山の丸編み地が主力。合繊トリコットはシャツ地、ラミネート生地の裏地などが主要用途で、和歌山の丸編み地はインナーがメイン。トリコットは北陸3県で常時十数軒の取引先と協業しており、支店開設効果で丸編み地でも数軒の工場と取り組みが進んでいる。

 トリコットのシャツ地は近年のヒット商品で、今後もヒットを生み出すべく産地企業と一体で用途開発を続ける。

 北陸支店長兼繊維資材事業部繊維資材1部長の増田悟氏は今後の重点方針に、「売る力を身に付けること」を挙げる。特に重視するのは海外。そのため海外展への出展を積極化する。販路開拓と用途開発を続けて産地や染色加工場への安定発注につなげ、共存共栄を実現する考えだ。

 開発力の引き上げにはモノ作り企業との協業が必須とし、リアルコミュニケーションを軸に情報交換をさらに密にしていく。