特集 2024年夏季総合Ⅱ(7)/活躍支える検査機関/ボーケン/カケン/ニッセンケン/QTEC

2024年07月26日 (金曜日)

〈ボーケン/挑戦する専門技術者集団〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、従来の納品前検査業務に加えて、認証分析・品質支援によって「カスタマーサクセス」を実現するサステイナブル事業、非アパレル分野を含めた新規の機能性試験や教育支援に取り組むウェルビーイング事業の拡大を進めてきた。

 特に近年、ボーケンの教育支援が繊維業界でも存在感を増す。2024年度は上半期までで6事業本部で40講座の開講を計画する。品質、環境、安全、人権などの最新情報や評価技術、事故情報など提供し、既に延べ千人以上が受講した。

 入門的内容だけでなく、中級・上級レベルの講座も用意しているのが特徴だ。例えば環境セミナーの応用編として繊維製品の製造工程のサステイナビリティー評価モジュールであるHiggインデックスFEMの最新情報をワークショップ形式で学ぶことができる。

 規格試験だけでなくカスタマイズ試験など新たな評価技術の開発もウェルビーイング事業の重要な役割。素材の評価技術だけでなく製品性能の評価にも力を入れており、製品の性能評価を得意とするユニチカガーメンテックとの協業が進んだ。

 こうした取り組みによって、「幅広い対象分野とより深いサービスで、社会の品質・環境・人権課題に挑戦する専門技術者集団」としての立ち位置を占めることを目指す。

〈カケン/世界視野に人材育成〉

 カケンテストセンター(カケン)は、さまざまなカリキュラムを用意して人材育成を図っている。中でも世界で活躍できる職員の育成・確保に力を入れており、海外短期出張研修や海外勤務チャレンジ制度などを設けている。また、中途採用による人材活用にも取り組んでいる。

 海外の拠点を順次拡大してきたカケン。20年前は20人弱だった海外駐在員数は、現在では約50人に増えた。国際人材を育てることはカケンにとって大きな課題であるとし、新型コロナウイルス禍でいったんは中止を余儀なくされた短期出張による研修を復活させるなど、再強化を図っている。

 海外短期出張研修は、昨年と今年春に中国の青島試験室で実施し、合計16人が参加した。今年秋には上海科懇検験服務でも実施する予定だ。海外勤務チャレンジ制度は、一定の条件を満たした職員に期間限定で海外勤務の機会を提供する制度で、中国に赴任した女性職員もいる。

 人材確保では中途採用も積極的で、国内の正社員・嘱託社員630人のうち220人が中途採用という。繊維関連や他業界から転職者があり、多様な人材がそろう。それがカケンの強みの一つにもなっている。

〈ニッセンケン/有害化学物質分析などに力点〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、社会に必要とされる検査機関を目指し、さまざまな要望に応えられる多様なメニューをそろえる。それらの中でも注目度の高まりが見込まれているのが有害化学物質の分析だ。強みとする分野の一つであり、しっかりと対応する。

 欧米を中心に規制が進むPFAS(有機フッ素化合物)。エコテックス国際共同体(スイス)も総フッ素含有(TF)法を用いた分析試験を採用するといった動きを見せている。同共同体に加盟するニッセンケンも情報発信を含めて対応強化を図っており、問い合わせや試験件数も着実に増えている。

 抗菌や抗ウイルス、抗カビ、消臭をはじめとするバイオケミカル分野にも引き続き重点を置く。新型コロナウイルス禍で注目された抗菌や抗ウイルス試験は、現在は落ち着きを見せているが、必要不可欠な分野と位置付ける。

 検査機関として活躍の場を広げるため、疲労回復ウエアの評価試験、遮熱・UVカット試験の高度化、持続冷感に関する試験の開発を進める方針で、必要に応じて設備投資も行う。化粧品など、繊維以外の領域の需要も取り込む。

〈QTEC/活躍する若手が育つ〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、今年度(2025年3月期)が最終の中期経営計画の重点施策の一つに人材育成を掲げる。若い職員は着実に育ち、さまざまな場面で活躍するようになっている。神戸試験センターの中嶋絵里さんもその一人。6月下旬に信州大学繊維学部で開催された日本繊維製品消費科学会・年次大会で「若手優秀発表賞」を受賞した。

 今年で入社8年目の中嶋さんは、微生物試験をはじめとする業務に携わる。同大会では研究発表者として登壇し、「新型コロナウイルスを用いた繊維製品の抗ウイルス性試験方法」について発表。その内容が評価されて受賞の運びとなった。

 賞をもらったのは初という中嶋さんは「自信になったし、モチベーションアップにもなった」と喜びを表した。また「入社当時は研究を進める中で失敗も多かったが、上司や先輩に『失敗を含めて結論に至る』と励まされた。後輩には失敗を恐れずに、粘り強く研究活動に取り組んでほしいと伝えたい」と若手育成のノウハウを継承する気持ちを語った。

 今後も「微生物関連業務を頑張りたい」とした上で、「海外での仕事にも携わっていくことができれば」と目標を語った。