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東洋紡せんい、セイコーエプソン/新たな開繊技術を解説/日本繊維機械学会で

2024年07月26日 (金曜日)

 繊維リサイクルシステムの社会実装とリサイクル原料を使った再生糸(リサイクル糸)の普及を目指す日本繊維機械学会再生糸普及委員会はこのほど、大阪市内で講演会を開き、東洋紡せんいとセイコーエプソンがそれぞれ実用化した新たな開繊技術について報告した。

 東洋紡せんいマテリアル事業部の大島享氏は、同社がインドの大手紡績と連携して商品化したリサイクル綿糸「さいくるこっと」を紹介。さいくるこっとは廃棄綿布を裁断後、特殊なオイリングとエアーブローによって開繊する。このため繊維長が維持され、高品位でリサイクル原料高混率、細番手糸の生産が可能な点を解説した。

 今後は使用済み繊維製品などポストコンシューマー原料の使用に向けた開発にも取り組む。

 セイコーエプソンの細野聡執行役員は同社のインクジェット捺染機のほか、水を使わずに繊維を開繊する「ドライファイバーテクノロジー」を紹介した。こちらもエアーの力で繊維を開繊する。香港繊維アパレル研究所(HKRITA)と共同研究を進め、新タイプのリサイクル紡績糸の実用化に取り組んでいる。

 講演後、大島、細野両氏に加えて、再生糸普及委員会の委員長である神戸大学の井上真理教授、委員会運営委員の京都工芸繊維大学の木村照夫名誉教授、滋賀県立大学の森下あおい教授、マツオインターナショナルの松尾憲久社長が参加してパネルディスカッションを実施した。

 討議では「再生糸の普及のためには品質表示をどうするかという問題がある」(松尾社長)、「『KES』(風合い測定)によって再生糸を具体的に評価することができる」(井上教授)、「消費者にとって再生糸を使う価値を明確にする必要がある。そのためには教育の役割も大きい」(森下教授)、「生地・製品になったときにどのようなメッセージを発信するのかの根拠となる糸でないといけない」(大島氏)、「消費者の意識は意外と早く変わるのでは。ただ、コスト競争力は重要であり、普及のためには制度的なインセンティブも必要」(細野氏)といった意見が出た。