2024年夏季総合特集(6)/こんなところで活躍するわが社の「繊維」/シキボウ/ダイワボウレーヨン/新内外綿/蝶理/豊島
2024年07月25日 (木曜日)
〈水平・垂直連携を深化/外、外の新ビジネス創る/シキボウ〉
シキボウは、繊維部門の基本戦略として「セグメント内外での垂直・水平連携の強化」を掲げてきた。今期(2025年3月期)はその戦略をより深化させ、持続的な成長につなげる。
中でも海外市場の拡大が同社にとって急務であり、22年に台湾、今年ベトナムで現地法人を設立し、新たな市場を急速に広げつつある。ベトナムでは日本向けに製品ビジネスを拡大しているが、欧米や東南アジアなど第三国輸出も想定する。拠点を通じた内販にも取り組み、インドネシアの紡織加工会社のメルテックスでは資材やスクールシャツで現地向けの販路も広げる。
さまざまな海外戦略を遂行するグローバル事業推進室ではメンバーを入れ替え、どのようなビジネスを組み立てていけるか活発的に議論。グループの新内外綿とは海外拠点間でも人材を異動させ、市場開拓を活性化させるなど、海外拠点で横の連携を強めながら、外、外の新たなビジネスの構築に取り組む。
好調な中東民族衣装向けの生地輸出を受け、染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)では外注に発注していた加工を自社で取り組み、これまでの加工量を増やしつつある。今夏にスチーマーやベーキング機の設備を更新し、織布では生産性の向上とともに、新たな素材、加工の開発も進める。メルテックスでも精紡機に自動玉揚げ装置(オートドッファー)を取り付けた。生産効率の向上とともに、省エネ化も推進する。
中長期的にシキボウの商品や素材を含め、企業価値そのものを高めるためにブランド戦略プロジェクトも推進。ファッションブランド「アンリアレイジ」との連携や、スポーツ選手との契約などを通じ、国内外でハード面だけでなくソフト面からも企業価値の向上に取り組む。
〈好調続く難燃レーヨン/ベッドマットなど需要増/ダイワボウレーヨン〉
日本の繊維製品輸入浸透率が100%に迫る中、素材分野では国際競争力を維持し、輸出で成果を上げるものがある。機能レーヨン短繊維もその一つ。日本唯一のレーヨン短繊維メーカーであるダイワボウレーヨンは、底堅い需要がある防炎・難燃レーヨンや得意の練り込み技術で実現した機能レーヨンの輸出に力を入れる。
同社のシリカ系防炎剤練り込みレーヨン短繊維「FRコロナ」シリーズは、米国を中心にベッドマットのウレタンを包む防炎材として豊富な実績を持つ。最近では紡績可能な「FRL」が主力となった。
現在、米国では金利上昇の影響で住宅着工数が減少。このためベッドマット向けが主力のFRコロナの販売も鈍化した。ただ、同国では重金属規制が強化されており、アンチモンを含む防炎剤を使った防炎素材からシリカ系防炎剤を使うFRLへの切り替えが進む。このため市況が低迷する中でも底堅い需要がある。
一方、好調が続いているのがリン系難燃剤練り込みレーヨン短繊維「DFG」。難燃防護服用途での採用が拡大した。特にアジア諸国でも労働現場での安全意識が高まり、難燃作業服の着用が徐々に普及していることで需要が拡大している。今後も民需、官需ともに海外案件を積極的に確保することを目指す。
さまざまな機能材を練り込んだ機能レーヨン短繊維も輸出に力を入れている。特にフェースマスク用途はアジア市場で高付加価値な機能レーヨンへのニーズが高い。現在の円安も追い風として、海外での提案に力を入れる。
〈最小20キロの少量多品種/紡機切り替えで160品番/新内外綿〉
アパレル市場で生産数量の小口化が進む中、紡績の新内外綿(大阪市中央区)はニーズに合った個性ある糸の少量、多品種での供給に力を入れている。
子会社で同社唯一の国内紡績工場であるナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)の顧客当たりの発注数量の平均は500キロほどだが、最小で20キロから糸の製造にも対応する。約2万錘の糸の製造ラインを品種ごとに小刻みに切り替えて、月160品番もの糸を作っている。現在の紡機の稼働率は95%ほど。
同社の糸はTシャツやカットソーなどニット地に使われることが多い。製造する糸の平均番手は28~30番手単糸とやや太めだが、100番手という極めて細い糸も製造可能だ。
老舗の綿紡績で、仕入れる原料は綿花が今も6割程度を占める。しかし近年、消費者ニーズの多様化とともに合成繊維、羊毛、レーヨンなど幅広い繊維原料を取り扱うようになっている。
“環境”への意識がファッション業界で高まる今、環境への配慮をキーワードとした同社だけが取り扱う糸のラインアップも充実している。例えば、植物や果実由来の染料を使ったオーガニックコットン糸「ボタニカルダイ」はその一つで、売れ行きが拡大している。
それ以外に同社の紡績の長年のノウハウを生かし、商用化されることが少ない未利用繊維の活用にも力を入れている。これまで竹、ヘンプ、ヨシなど綿混で紡績し商品化した。来年に向けて、パイナップルの葉脈繊維と綿の商材も開発中だ。今年発売したトルコ製オーガニック綿糸「エーゲ海オーガニック」も綿花生産者が見える環境を考えた糸として注目を集めている。
〈ブルーチェーンの認知広める/消費者向け発信に着手/蝶理〉
蝶理は2020年から、サプライチェーン全体のサステイナブル化を目指す「ブルーチェーン」を展開している。廃ペットボトル由来の再生ポリエステル糸「エコブルー」や高伸縮機能糸「テックスブリッド」などの独自素材も、ブルーチェーンのコンセプトに基づく形で提案する。現在、北陸産地の取引先を中心とした約140社から、活動に対する賛同を得ている。
原料を起点とする発信によって、繊維業界でブルーチェーンの認知は広がった。持続可能な繊維産業と社会の構築という目標に近づくため、活動内容の拡大を図りながら、消費者の認知度を高める取り組みにも着手した。
その一環として、廃棄される繊維を循環させるスキーム「B―LOOP」(ビーループ)の提案に力を注ぐ。繊維製品の製造工程で発生する繊維くずや古着を回収し、新しい繊維に再生させて価値を持たせるという循環の仕組みを築く。各企業に向け、共にこのスキームを活用し、持続可能な社会づくりに取り組むパートナーシップへの参加を呼び掛けている。このほど消費者に向けても、メッセージを発信する動画を作成、ユーチューブで公開を始めた。
さらに認知を広げるため、同社はサーフィンの日本代表「波乗りJAPAN」とスポンサー契約を締結した。海という自然を相手にするサーフィンは、選手や愛好者の多くが大会中にビーチクリーンを行うなど、環境保全に対する高い意識を持つ点に共感し、スポンサー契約を決めた。
パリ五輪での活躍が期待される選手をはじめ、国内のトップサーファーへの応援を通じ、ブルーチェーンをアピールする。
〈環境配慮素材で協業広がる/持続可能な未来の創造へ/豊島〉
豊島は環境配慮型素材の特徴を生かした商材を提案し続ける。地球環境に配慮した素材や、再生原料で環境負荷を低減するといった取り組みを強化し、持続可能な未来を創造する。
オーガニックコットンの普及を通じて社会に貢献するプロジェクト「オーガビッツ」は2025年8月29日で20周年を迎える。記念日までの期間、ファッション関連品や消費者に向け20周年の共同事業やイベントを行う。
オーガビッツは商品にオーガニックコットンを10%以上使用することが要件。これまでもファッションブランドを手掛ける企業などに参画をアピールしてきた。オーガビッツ使用商品の販売価格には、オーガニックコットンを生産する農家やNPO法人を支援する寄付金が含まれる。
20周年企画では、オーガビッツと日本クリニクラウン協会の協業限定で、アパレルや服飾雑貨などに赤い鼻を付けたキャラクターデザインが使用できる。スヌーピー以外にもサンリオのハローキティーなども加わる。販売金額の一部が病院で過ごす子供たちに笑顔を届けるクリニクラウン(臨床道化師)の活動に寄付される。
海岸などで回収したペットボトルごみを環境負荷の低い製品に再生する「アップドリフト」も、さまざまな協業が進む。ペットボトルごみは地方公共団体や企業と連携して行う、ビーチクリーンアップ活動で回収。沖縄県石垣市など各所で開催してきた。主旨に賛同する企業も増え、時計の部品やアパレルにも使われる。
企業ユニフォームにも採用が広がった。オンワードコーポレートデザイン(東京都千代田区)が手掛ける、ドトールコーヒー(同渋谷区)の新制服への使用が決まった。