ひと/ダイワボウレーヨンの社長に就いた巽 哲一 氏/国産レーヨン守る
2024年07月25日 (木曜日)
6月26日付でダイワボウレーヨンの社長に就いた。同社は、いまや国内唯一のレーヨン短繊維メーカーであり、国産レーヨンを守る役割が課される。そのためにも販売の拡大に加えて生産設備の維持・改修の実行がミッションとなる。
大和紡績時代は、主に寝装畑でキャリアを積んできた。ちょうど総合小売業(GMS)が成長し、寝装の流通チャネルとして存在感を高めている時期。「大手GMSに防ダニ加工の寝装生地を提案したら、これが大ヒット。供給が追い付かずに非常に苦労したことも思い出」と振り返る。
流通構造の変遷も目の当たりにしてきた。量販店・GMSの成長に合わせて取り扱い商材もテキスタイルから製品へと変わり、SPAが台頭すると、再び原料供給が主流になっていった。
抗ウイルス加工「アレルキャッチャー」を使ったマスクを担当し、2011年の鳥インフルエンザ発生の際には大手コンビニから大量発注があったことなども印象に残る。
紡績のテキスタイル・製品事業の中でも比較的数量が大きい寝装分野を担当してきた巽さんだが、21年にダイワボウレーヨンに移籍した際には文化の違いに戸惑いもあった。「それまで担当していた生地・製品と、ダイワボウレーヨンが扱う原綿では販売単位が桁違いに大きい。特に防炎レーヨンの対米輸出を担当したので、米国の市場規模の大きさに驚きました」
それだけに、海外販売の重要性を再認識している。現在、日本でレーヨン短繊維を生産するのは同社だけだ。国産レーヨンを守るために機能レーヨンによる海外販売の拡大は不可欠。その上で「生産拠点である益田工場(島根県益田市)の設備が古くなっており、改修や更新が必要。この2、3年のうちに設備投資する計画」と話す。
趣味はゴルフ。ただ、最近は仕事が忙しく、ほとんどラウンドできていないそうだ。「その代わりに毎日5キロ歩いている。ちょっと体重の増加が気になっているので」と笑う。益田工場と大阪の本社を行き来する忙しい生活が続くが、ウオーキングで気力充実。
(宇)
たつみ・てつかず 1987年、法政大・経営学部卒、大和紡績入社。ライフスタイル部長などを経て2021年ダイワボウレーヨン入社、23年総務部長、24年管理部長、同年6月から社長。和歌山県出身。59歳