ワークウエア/素材、回収・再生などから環境配慮進む/行政から情報開示の指針も
2024年07月25日 (木曜日)
ワークウエア業界にも環境に配慮したモノ作りが浸透してきた。CSR(社会的責任)を果たしたい大手企業向けの納入を中心に需要が高まっているほか、行政からも環境配慮情報の開示を期待する指針が発表された。素材からのアプローチや、回収と再生のシステム構築など、さまざまな角度から実現を目指す取り組みが広がる。(勝木 徹)
経済産業省製造産業局生活製品課がこのほど発表した繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドラインでは、2030年度をめどに国内市場の主要なアパレル企業において情報開示率を100%にすることを目指す、とある。これを受けて、メーカーの取り組みはさらに加速しそうだ。
ガイドラインの中で、環境に配慮した素材・原料を使用した事例としてアイトス(大阪市中央区)の名が挙がった。植物由来ポリエステル繊維を使用した情報を製品カタログなどに掲載しているほか、独自にサステイナブルランクを設定するなどの点が評価された。伊藤崇行社長は、「環境配慮への需要は高まっており、この取り組みが差別化にもつながっている」とさらなる加速を目指す。
同様に、素材から環境配慮へアプローチするメーカーは少なくない。サンエス(広島県福山市)は、「誰一人取り残さないSDGs(持続可能な開発目標)の目指す社会へ、環境だけでなく人権にも配慮し貢献していきたい」(佐藤大起代表取締役専務執行役員繊維部門長)としてコットン∞を採用した。豊田通商、信友、シキボウが連携して展開するフェアトレードの綿で、国際フェアトレードラベル機構が認証する。
TSデザイン(福山市)は、裁断くずや残反、廃棄衣料などを科学的に分解してケミカルリサイクルした素材「テックリサイクT/Cツイル」を開発した。瀬尾雄作ブランド戦略部長は「企業納入向けに市場要望がある。機能、エシカル思考、価格のバランスをとることでブランドとしての厚みを持たせたい」とする。
桑和(岡山県倉敷市)は副資材からアプローチ。特定の副資材を使うことで売り上げの3%を寄付する「T.S.P.L.」(副資材で持続可能な社会の実現に貢献するプロジェクトのラインアップ)を提案した。気候変動など特定の分野に寄付できる。藤井荘大社長は、「会社存続のためには、社会貢献は必須」として環境配慮設計を推進する。
回収と再生によって環境に配慮したモノ作りを実現する取り組みも広がる。ビッグボーン商事(福山市)はエコログ・リサイクリング・ジャパン(同)のマテリアルリサイクルに参加している。ポリエステル繊維製品を回収し、ペレットとして再生。製品に作り変える。宮原義則常務取締役企画本部長兼生産本部長は「資源の少ない日本のために貢献したい」と話す。
コーコス信岡(同)が始めたのは「マテリアルリサイクルシステム」。着用済みのユニフォームをアップサイクルする取り組みで、反毛などの工程を経て、フェルトに作り変える。吸音材や自動車用パーツ、水害防止河川敷用マットなどとして活用する。林威喜企画部長は、「今回の取り組みは、再生後の出口が明確な点が高い意義を持つ」と話す。エコマークやカーボンオフセット、再生PET100%などこれまで進めてきた環境配慮設計と併せたブランディングとして取り組む。