特集 今治タオル産地(7)/繊維機械編/最新機種の提案進む/ピカノールとエディー/伊藤忠マシンテクノス/ストーブリ

2024年07月19日 (金曜日)

 繊維機械メーカーにとって今治は重要な産地に位置付けられる。要望が増える省エネや省人化、扱いやすさ、高付加価値化などにつながる最新機種の提案が進められる。

〈ピカノールとエディー/ウルティマックス テリー主力に/幅広いタオル生産に対応〉

 ピカノール(ベルギー)の日本総代理店を務めるエディー(大阪府東大阪市)は、今治産地に向けてタオル用レピア織機の最新機種「ウルティマックス テリー」の提案を進めていく。昨年6月のITMAミラノで発表された最新機で、デジタル技術による扱いやすさや精密なパイル形成、安定した高速稼働などの特徴を持つ。

 ピカノールは今年から、ウルティマックスの本格生産を開始した。タオル織機もウルティマックス テリーが主力機種となり、日本でも提案していく。

 ピカノールは早くから①スマートパフォーマンス②サステイナビリティー③データによる操作④扱いやすさ――に重点を置いて織機の開発を進めてきた。ウルティマックス テリーもデジタル技術を駆使した扱いやすさが好評を得ており、ポルトガルなど欧州での導入が進んでいる。昨年秋に今治でセミナーを開くなど日本での提案も強化しており、第1号機の導入に向けて取り組む。

 ウルティマックス テリーは、幅広い糸種への対応や多様な緯入れ、安定した高速稼働、レピアヘッドの耐久性向上なども特徴。生産性は全機種比10~20%向上させている。

 パイルの品質も評価を得ている。独自のパイル・モーター設定で生地を直接駆動させると同時にバックレストが動き、高速稼働でも正確にパイルを形成していく。軽量なタオルから重厚なバスマットまで幅広く対応する。

〈伊藤忠マシンテクノス/評価高まる部分整経機/電子ジャカードも実績高まる〉

 伊藤忠マシンテクノスは、オペレーターの高齢化や人手不足など繊維産地が直面する課題を解決する最新機械の提案に注力する。今治タオル産地に向けて部分整経機など準備機械から電子ジャカードなど製織機械、さらにはヘム縫い機など仕上げ加工機まで幅広いソリューションを提案する。

 今治産地に向けて提案している機械の一つが、梶製作所(石川県かほく市)と共同開発した部分整経機「KGA163C」。既に4台を納入し、年内には5台目が納入予定だ。

 引き合いも増加するなど評価が高まる。産地の要望を取り入れながら開発したことで操作性に優れ、若手オペレーターでも容易に性能を発揮できる。

 また、メインフレームは中国で生産するが、インバーターや電装、センサー類は日本製が採用されており、安全性とコストパフォーマンスにも優れる。ユーザーからのフィードバックを生かした改良も随時進めた。

 製織機械では、ベルギーのバンデビーレグループ、ボーナスの電子ジャカードを提案する。エアジェット織機に適した高速・大口数対応の「Si」、レピア織機に適した「Ji」をそろえる。直接駆動方式のスマートドライブを採用することでカルダンシャフトを廃止でき、省スペース性に優れるほか、性能と価格のバランスの良さも好評だ。Jiは既に今治産地で8台導入するなど実績が高まってきた。

〈ストーブリ/新型ジャカード導入促進/省エネや扱いやすさに注目〉

 ストーブリは今治タオル産地に向けて最新の電子ジャカード機やタイイング機の提案を強める。

 電子ジャカード機は全ての口数が新機種「プロ」シリーズに切り替わった。新システムの採用や電装ユニットの一新などにより、さらなる省エネや省スペース化などを実現している。消費電力は、2688口のSXプロで従来比約30%、6144口のLXプロで約20%の削減が期待できる。

 プロシリーズはまず今治から導入が進み、SXプロは今年に14台の導入が決まっている。導入した企業では初期トラブルもなく順調に稼働しているといい、これからLXプロの提案も本格化する。物流の混乱もあって足元の納期は約5カ月になっており、7月中の契約だと年内に導入することも可能。

 プロシリーズには新型コントローラー「TC8」を搭載しており、スマートフォンのような感覚で操作できる扱いやすさも好評を得ている。機種によっては古い電子ジャカード機にTC8を搭載することもでき、30年ほど前の「JC4」や「JC5」からの載せ替えも提案していく。

 製織準備機では、タイイング機「タイプロ」の提案を進める。タイプロは従来のニードル式ではなく、スピンドル式を採用した最新機種。2本取りの自動検知機能やオートリバース機能を標準搭載、作業者の負担軽減や人為的ミスの削減などの面で注目されている。

〈半自動ヘム縫製機/各社で活用進む〉

 今治タオル工業組合のイノベーションワーキングループが機械メーカーのバルダン(愛知県一宮市)と共同開発した「半自動タオルヘム縫製機」(半自動縫製機)の活用が産地で進んでいる。

 今治産地では一般的なミシンによる縫製従事者が慢性的に不足しており、産地内のタオル生産量が増加するたびに縫製キャパシティーの不足が指摘されてきた。

 時期によって加工料金や納期も変動するため、縫製工程を含む安定したサプライチェーンの維持、確保がタオル製造業各社の課題となっていた。

 タオル製造業も縫製工程の自社内製化などで対策を講じてきたが、半自動縫製機の導入が対策の一手段となりつつある。

 今年前半はタオルの生産量が少なく、タオルの縫製キャパシティーには余裕があるとみられている。

 そのため半自動縫製機を導入したタオル製造業の中にも縫製を外注しているケースがあるようだ。逆に導入以降は外注を使わず、ヘム縫製のほとんどを自社で行うようになった――というケースも聞かれる。

 いずれのタオル製造業も「縫製手段の選択肢が広がった」ことをメリットとして挙げる。

 同産地ではフェースタオルサイズに対応する半自動ヘム縫製機が約40台稼働している。バスタオルサイズに対応できるタイプの開発も完了しており、年内に1号機が導入され、本格稼働する見込みだ。