LIVING-BIZ vol.108(2)/特集 寝具寝装モノ作り/需要低迷で生産数量減少/きめ細かな対応力強みに

2024年07月17日 (水曜日)

 2024年の寝具市場は、前年に引き続き逆風に見舞われている。インバウンドの増加によるホテル用途は比較的健闘するが、家庭向けが落ち込む。その影響で24年1~4月の国内生産、輸入数量とも前年同期を下回る。需要低迷が続く中、新たなモノ作りのかたちを模索する。

〈輸入数量も4%減〉

 新型コロナウイルス禍は、外出自粛による“巣ごもり需要”やリモートワークの普及で家庭用室内アイテムが堅調だった。その反動減が続いているとの見方もあるが、今年の厳しさはそれだけでは説明できない。

 寝具製造卸によると、寝具小売市場は6月まで、3月を除いて前年同月を下回る。チェーンストアの6月の寝具売り上げも前年同月比10%弱減。天候要因もあるが、「あらゆるモノが値上がりする中で、節約志向がより強くなっている」(寝具製造卸)と分析する。食料品や光熱費などの物価高が続く中で個人消費が落ち込み、寝具の購入が後回しにされているとみられる。

 厳しさは国内生産・輸入数量にも表われている。財務省の貿易統計によると、24年1~4月のふとんの輸入数量は、前年同期比約4%減の536万枚。経済産業省の生産動態統計によると、ふとん生産数量は、同2・8%減の68万7173枚にとどまる。生産数量の減少は、一定の数量を必要とする染色加工業などの経営を圧迫しており、国内の持続的なモノ作りの基盤が一段と揺らぐ恐れがある。

 さらに厳しい経営環境を乗り越えてきた寝具メーカーがここに来て破産申請する動きが複数見られ、国内寝具製造企業のさらなる減少も懸念される。

〈ホテル向け需要に対応〉

 家庭用途は24秋冬に向けても厳しさが見込まれるが、ホテル用途の需要は引き続き期待できる。国内のきめ細かな対応力を強みに販売を伸ばすメーカーも見られる。

 寝具、インテリア布物雑貨を製造しネットで販売する城野寝具(大阪市淀川区)は、宿泊施設や飲食店などコントラクト用のOEM・ODM受注が増えている。インバウンドで活況なホテル向けのクッションやベッドスロー、ソファカバーの別注などが増加傾向にあると言う。自社の縫製機能のほか、近畿エリアに縫製などを手掛けるメインの協力企業が5社ある。通常納期は1カ月程度だが、生地などの在庫があり、10~20個程度であれば2週間以内に納品できる。小ロットにも柔軟に対応し、きめ細やかな対応力を強みにする。

 ホームファッションテキスタイルを備蓄販売するアルテモンド(同中央区)の23年10月~24年3月期は、宿泊施設向けの売り上げが約2倍になった。宿泊施設のベッドスローや座ぶとんに、ポリエステル使いで無地系のドビーやジャカード柄が入った生地などが採用されている。寝装品やカーテンなど大物にも適した150センチの広幅、約1千種類の柄色を備蓄し、1メートルから対応する点も強みに挙がる。

〈越で改質わた・糸生産へ/顧客の生産シフトに対応/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループ寝装チームは、インド、ベトナムで機能をアップさせる改質加工技術を生かした糸・わたの製造販売に力を入れる。寝具業界で中国以外の海外生産を強化する流れがある中、強みである繊維の改質加工をインド、ベトナムで対応できる体制を構築し、顧客ニーズに応える。

 インドでは、現地の大手紡績と連携して有機綿を改質して吸湿発熱機能を半永久的に高めた糸「ホットナチュレネオ―O」を供給できる体制を構築する。先行するインナー用途ではインドで製造した同素材をASEAN地域に販売しており、寝装用途でも取り組みを進める。

 ベトナムでは協力工場を活用し、有機綿・非有機綿の改質加工、レーヨンの改質加工「リフレス」、紡績に加えて、寝装品の中わた用途向けに吸湿性の低いポリエステルを改質することで綿並みの吸湿率に高めたポリエステル短繊維「グレファージュ」の生産体制の構築を進める。グレファージュは、24年内に現地で開発試験を行う予定で、早期に生産可能な体制を構築する。

 寝装向けでは業務用リネン製品の開発や、24秋冬から上市予定の改質ポリエステルと粒状ポリエステルわた技術を掛け合わせた「グレファージュ×グレンゲラン」素材にも力を入れる。

〈23年のふとん生産/前年比12・2%減〉

 経済産業省の「生産動態統計」によると、従業員20人以上の事業所の2023年のふとん生産は、前年比12・2%減の241万枚だった。20年以降、300万枚割れが続いている。

 掛けふとんは15・8%減の40万7143枚、敷ふとんは7・6%減の87万8093枚、こたつふとんは33・1%減の4万6409枚、羽毛・羽根ふとんは13・1%減の108万3197枚だった。