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在庫処分サービス、毛布製造卸、紡績など/反毛で「勝ちパターン」描く/技術と連携で付加価値高める

2024年07月11日 (木曜日)

 繊維のリサイクルが活発化する中、反毛が注目を浴びている。これまで回収、分別によるコストで厳しい面があったが、連携や技術力の向上で利益を上げて事業を継続できる“勝ちパターン”を描きながら、新たな活路を開きつつある。(於保佑輔)

 アパレル商品の在庫処分サービスを展開するshoichi(大阪市中央区)は、ウールのリサイクル事業を本格化している。在庫処分サービスで買い取る商品以外にも「捨てられている商品がたくさんあり、何とかしたい」(山本昌一代表取締役CEO)として、リサイクルウール糸を開発して製品供給ができる体制を構築した。

 反毛はサンリード(愛知県一宮市)、紡績は大和紡績(同)、編み立てや縫製はアイソトープ(大阪府泉大津市)が担う。ウール製品の回収は在庫処分品だけでなく、取引先の店頭で回収ボックスを設置するなどで集めた中古品にまで拡大。人工知能(AI)の活用で廃棄されるウール製品の仕分けにもめどが付いてきた。

 「国内外を問わずアプローチできるようにしていきたい」(shoichiの山本CEO)として、今日11日までイタリアで開催中の国際服地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)に初めて出展。欧州からの廃棄衣料の輸送方法などは「取引が決まってから考える」としているが、新たな提携先との連携で「勝ちパターン」を描ける仕組みの構築に乗り出す。

 そのshoichiに今回、MUで展示するリサイクルウールを使った丸編み地など提供している大津毛織(大阪府泉大津市)では、自社で消費する反毛原料がここ数年、年間で2割ずつ増えてきた。同社では繊度が20¥文字(U+3343)㍍以下の反毛わたを厳選して使うなどで風合いの良さを出せることが強み。今年も増加を見込むが、「年間200㌧でも足りない」(下村辰雄常務)として、来年はさらに調達を増やす。

 先月、経済産業省から「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」が公表され、資源の循環利用が促進される中、ますます反毛の需要は増えそうだ。回収や分別にコストがかかり、採算が合いにくいという課題を高付加価値の追求で乗り越える。

 毛布・フェルト製造卸の丸竹コーポレーション(大阪府泉南市)は昨年、独自設計の「裂断機」を導入し、「バージン原料と見間違うほど高品質な反毛わたができる」(立花克彦社長)技術力を確立した。4月から「隙間を目指す」として高付加価値、小ロット、多品種を軸に事業を拡大。アラミドやケブラーが使われる消防服を反毛し、単価の高い高機能手袋用途へ供給するなどによって利益率を高める。

 各産地との連携も模索。播州産地と新たな織物開発に向け試織を始めた。さまざまな連携を通じて「ひらめきが出てくる」として別の切り口からも反毛糸の用途を探る。

 紡績ではクラボウの「ループラス」や、シキボウと新内外綿の「彩生」といった反毛技術で再資源化する取り組みが拡大。いずれも東南アジアの縫製工場などから端材を集め、タイで反毛する仕組みも整え、海外ビジネスの拡大につなげる。

 ニッケグループのフェルト・不織布製造卸のエフアンドエイノンウーブンズ(大阪市中央区)は、石岡工場(茨城県石岡市)に新設備を導入し、反毛繊維の生産量を10倍に拡大、今年12月には試運転を始める。他にも国内で反毛工場を新たに作る動きが水面下で見られ、需要拡大で商機を捉える。