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この人に聞く/御幸毛織 社長 渡邉 紘志 氏/可能性と実力を新たな分野へ

2024年07月08日 (月曜日)

 服地・スーツ製造販売の御幸毛織(名古屋市西区)は先月19日付で、東洋紡参与兼東洋紡〈タイランド〉社長だった渡邉紘志氏が社長に就任した。就任早々の渡邉社長に、御幸毛織の印象や今後にについて聞いた。

  ――社長就任への受け止めは。

 まず「自分に何ができるだろうか」と思いました。東洋紡時代に綿から合繊まで広く携わりましたが、羊毛だけは扱ったことがありません。東洋紡時代はほとんどネクタイを着用していませんでしたので、就任後すぐにスーツを数着あつらえました。

  ――御幸毛織の印象は。

 国内の紳士服業界で地名度があり、大きな可能性と実力を持つ企業だと思います。高級ゾーンには当社の服地が使われていますし、オーダースーツを仕立てる生産・縫製技術も確かだと言えます。

 直営工場でのトップ染めが可能なことも貴重ですし、フォーマルブラックの品質も他社に負けません。紳士服を中心に特定の販路や商流でビジネスを追求してきましたが、今後は異業種へのアピールや、海外メゾンへの訴求を強めることが大事だと考えます。

  ――新たなマーケットへアピールを強める。

 東洋紡時代に欧州企業とビジネスを進めた経験が生かされる可能性があります。海外高級メゾンでは黒を基調にした企画が恒久的に存在するので、それに見合う品質の服地を供給できるはずです。ドレス系だけでなく、カジュアルも手掛ける海外ハイブランドとの協業も可能性を感じます。

  ――伸び代や課題だと感じる点は。

 品質の確かさはもちろん、コンフォータブル(快適)なサービスを知ってもらうための“導線”作りが課題だと考えます。

 今回、スーツをあつらえた時に思ったのが“コンフォータブル”でした。散髪の時に髪を切ってもらう以外にも、マッサージや店員の会話などが客を快適にしてくれる。それに似たサービスの確かさを感じました。

 これまでも当社の従業員がアイデアを出して企業の認知度向上に取り組みました。そこをさらに深掘りし、(御幸毛織のオフィシャルスーツストア)ミユキ(クラフツスーツ)でスーツをあつらえる意味を固めていきたいです。

 当社は製造業だけでなくサービスの質もこだわります。こういった複数の付加価値を明確に訴求しながら、オーダースーツを身近に感じてもらうことが大事です。今はまだ明かせませんが、いろいろ考えはあります。

  ――来年1月、創業120年を迎える。

 これからも企業を長く存続させるため、その基礎作りにまい進します。協業先やオーダースーツの顧客との結び付きを強くしたい。また、私がこれまでお世話になったさまざまな素材メーカーとの協業もできればと考えています。新しい発想でウール以外の素材も拡充できるのではないかと期待します。