繊維ニュース

この人に聞く/日本化学繊維協会 会長 竹内 郁夫 氏/転換点迎えた化繊業界

2024年07月03日 (水曜日)

 日本化学繊維協会(化繊協会)の会長に東洋紡の竹内郁夫社長が就いた。前回会長を務めた2021年度から3年が経過し、「時代は大きく変わった。化繊協会は在り方を含めて転換点を迎えている」との認識を示した。化繊業界の方向性や課題などについて聞いた。

  ――化繊協会の24年度の活動方針は。

 21年度に策定した「中期活動方針2025」では、サステイナビリティーの推進、競争力の基盤維持・強化、情報発信の拡充を方向性としました。24年度もこの方向性に沿って活動を進めていきます。ただ、この3年間で時代は大きく変化しました。化繊協会も転換点を迎え、幾つも課題があると言えます。

 そのような変化した環境下で、サステイナビリティーの推進においては、環境関連問題と人権問題の二つの対応を進めます。競争力の基盤維持・強化では、標準化活動の推進や情報収集活動、人材育成などに力を入れます。情報発信の拡充では、ウェブサイトのリニューアル作業などに着手します。

  ――大きく変化したものとは。

 サステイナビリティーへの対応ではないでしょうか。重要性は3年前から変わらないのですが、切迫感が強くなってきたと感じています。これまでは、リサイクルを含めて各社、各協会のそれぞれで努力を行ってきましたが、個ではなく、社会全体の取り組むべき課題・事項になっていると言えるでしょう。

 もう一つは、原燃料価格の高騰や円安基調などによってコスト構造が大きく変わりました。化繊業界・企業を取り巻く状況は厳しさが増したと言えますが、そうした状況下でも各社が着実に利益を上げていくことが求められています。

  ――サステイナビリティーに関する欧州の規制も進んでいます。

 EU(欧州連合)の動きは早く、日本も危機意識を持たなければなりません。主張すべきところは主張するなど、きちんと発信しないといけないでしょう。そのためにも欧州の化繊協会やベルギーのロビー団体との連携を深めていきたいと考えています。

  ――化繊協会活動の在り方や期待されることも変化しています。

 化繊協会も以前とは違う立ち位置におり、会員各社の繊維事業の位置付けも一律ではなくなっています。昨年から議論を続けており、化繊協会には「業界振興」「会員の利益向上」だけでなく、「社会的責任を果たす」というパーパスも必要であるとの考えが出てきました。24年度からの1年間で具現化したいと思っています。