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東レ合繊クラスター/産地連携などに成果/設立20周年

2024年07月03日 (水曜日)

 東レ合繊クラスターは今年で設立20周年を迎えた。多くの会員企業は、この間の活動が自販への意識の高まりや産地内連携の進展などにつながったと評価し、今後のさらなる発展に期待する声が聞かれる。(星野公清)

 東レ合繊クラスターは東レと繊維関連企業とで結成。2004年に設立され、今年で20周年を迎えた。6月の定時総会時点での正会員数は69社で、紡績・糸加工、編み立て、織布、染色・後加工、縫製の各段階の企業が参加。垂直・水平連携による原糸から高次加工一貫の体制で新素材開発や新市場創出に向けた取り組みが進められている。

 活動の重点課題として「グローバルな活動の強化」「連携の多様化」「用途展開の進化」が掲げられている。特に産地企業同士の連携は、この間の取り組みで進展した成果の一つで、「技術・素材部会の分科会で活動する中で、以前はあまりなかった他の染工場とのつながりもできてきた」(東洋染工)などの声が聞かれる。

 小松マテーレは、企業間連携の進展や自販への意識の高まりをこれまでの成果として挙げる。かつては競合意識が高く、染工場同士のつながりが希薄だったが、「当社でできないケースはほかの染工場に依頼するなど横のつながりが出てきた」と言う。こういった横のつながりは、クラスター活動が進む中で自然とできていった。

 生産・開発の面でも成果が出ており、自販だけでなく、受託中心の工場でも担当者が自発的に動くようになったと言う。入ってきた生機を染めることに専念するだけでなく、今は受託加工においても製織企業とも話し合いながら最適な形に持っていくなど仕事の在り方も変わった。

 トリコット製造のケーシーアイ・ワープニットは垂直連携の進展を成果の一つに挙げ、「糸加工場や染工場とのつながりが増えてきた」と話す。連携による開発は個社での取り組みにも波及し、実際の販売にもつながっている。

 東レ合繊クラスターの前年度の製品出荷額は184億円で、10年前の100億円から大きく拡大した。販売を助ける賛助会員もこの間の成果を指摘し、一村産業は「この20年の成果は確実に上がっている」と話す。これからのクラスター活動では輸出の強化などが重点方針に掲げられる中、「出口戦略の強化」をポイントの一つに挙げ、技術・素材開発部会やマーケティング推進部会と連携しながら拡販に向けて取り組む。

 次の30周年に向けては新しい取り組みも重要となる。髙木義秀会長(福井経編興業社長)は、これまでの活動の成果が実績として現れている一方、「20年という年月によるマンネリ化も一部である」と指摘する。

 髙木会長は就任のあいさつの中で「グローバルな活動の強化」「クラスター活動の連携の多様化」「用途展開の進化」に継続して取り組むとともに、マーケティング強化や輸出拡大に取り組む考えを示した。対外的なマーケティングだけでなく、インナーマーケティングも重視し、活動内容を見える化してクラスター活動の活性化につなげる。髙木会長は、理事を含めて若手の役員が台頭してきたことにも期待をかけ、若手がさらに力を発揮できる場にしていくことにも力を注ぐ。