特集 オフィス・サービスウエア24秋冬(6)/素材メーカー編/素材力で循環経済実現へ

2024年07月01日 (月曜日)

 循環経済の実現には、製品のライフサイクル全体を通して資源の循環を促進し、環境負荷の低減を図る取り組みが欠かせない。ユニフォーム分野においても、製品の耐久性、リサイクル性、分解性を支えているのは「素材力」だ。

〈部門の総力生かす開発へ/独自の夏向け素材充実/東レ〉

 東レのユニフォーム地の販売を主力とする機能製品事業部は前期(2024年3月期)、インバウンド需要の拡大でシャツ、エプロンといった接客サービス向けが堅調だった。さらに新型コロナウイルス禍で停滞していた官公庁向けの別注案件が戻ってくるなど、前の期比で増収を確保した。

 バイオ原料ポリエステル「エコディア」やペットボトル再生繊維「&+」(アンドプラス)といった環境配慮型素材の販売も拡大。気温が高く、夏が長く続く傾向から麻調の「シャミラン」、独自技術で生地に通気孔を発現させた「ドットエア」といった高通気素材の採用が増えた。ナイロンの吸汗速乾・防透の「スプリンジー」や、汗染み防止機能付き吸汗速乾の「ソリテクト」といった差別化素材の拡販も進んだ。

 サービス、オフィス向けに浸透する梳毛調ポリエステル織物「マニフィーレ」も堅調に伸ばした。さらに全用途で編み地の採用も増えた。

 今期(25年3月期)に向けては、紳士・婦人やスポーツ衣料用途で展開する生地をユニフォーム用途へも活用するなど、所属するテキスタイル事業部門の力を結集しながら市場深耕に取り組む。スポーツ用途のハイストレッチ素材や、カジュアル用途の天然繊維調素材で、「強度や洗濯耐久性を高めてユニフォーム用途へアレンジする」などによってニーズを捉える。

 ワーキングで売れ筋のストレッチ素材「ライトフィックス」ではオフィスやサービスなど、他のユニフォーム用途へも広げるほか、スポーツ、カジュアルといった用途でも活用し、新たな需要を捉える。

 独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を用いた開発や、インクジェット捺染といった素材提案も強化。環境配慮ではバイオ原料ナイロン「エコディア ナイロン」を活用した循環リサイクルの仕組みも浸透を図る。

〈梳毛調ポリエステルなど柱/多様化するニーズに対応/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアのテキスタイル第二部は、梳毛調ストレッチ生地「トリクシオン」や「ウェーブロンUP」などをオフィス・サービスユニフォーム分野向けの重点生地に位置付ける。これらはニーズの多様化にも対応し、バリエーション拡充やニット(丸、経編み)の提案に力を入れる。

 トリクシオンは、梳毛調のナチュラルな外観とストレッチ性などを併せ持つポリエステル生地。従来から好評を博すロングセラー商品の一つだが、カジュアルテイストを付与したタイプや春夏向けの薄手といったバリエーションがそろい、オフィスウエア向けの柱素材に育ってきた。

 ウェーブロンUPは、特殊仮撚り糸と特殊織・編み構造を組み合わせた生地で、防透け性と高い紫外線遮蔽(しゃへい)率、遮熱性などを兼ね備える。25春夏物では丸編み地の提案も強化する。ウェーブロンUPとトリクシオン、汗染みを目立たなくする「デュアルファイン」で3本柱とする。

 2024年度(25年3月期)は、売上高は前年度並みを計画し、収益は改善を図る。3本柱をはじめとする差別化品の提案強化や価格の適正化を進める方針だ。また、将来的な取り組みとして海外市場にも目を向ける。

〈制服循環計画の準備進む/賛同企業を募る/ニッケ〉

 ニッケのビジネスユニフォーム部門の商況は、官公庁向けユニフォーム需要が安定して推移する。一方、民需においては航空業界の制服更新のタイミングが合わなかったものの、来期に向けて西日本エリアの私鉄数社で更新計画が進む。金融機関向けは地域によりばらつきはあるが、制服廃止の流れが強まる中で精彩に欠ける展開となった。

 鉄道会社からのニーズが最も高い素材は「ミライト」だ。ウールの内側に流れるようにフィラメントを内在させた偏芯らせん構造により、ソフトな風合いとウールの品格を実現。すっきりとした仕立て映えが公共交通機関としての信頼性をより高める効果の一助となっている。着用者にとっても耐久性や防シワ性、ウオッシャブルというイージーケアをはじめ、動きやすいストレッチ、形態安定機能で快適性が高い製品となる。

 他にサステイナビリティー活動に取り組む企業からは環境配慮型素材「ブリーザ」に注目が集まる。特許技術のサイクロンスピン製法により、生産にかかるエネルギーを大幅に削減。着用中や洗濯時のマイクロプラスチック放出を抑える。高い耐久性とハイストレッチも訴求ポイントになっている。

 同社では現在、循環経済構築の一環として、(仮称)「ユニフォーム循環プロジェクト」を立ち上げている。ウール混ユニフォームを着用後に回収し、分別・解体、反毛、紡績、織絨・整理、縫製を得て、再び制服として流通させる繊維to繊維の資源循環システムだ。鉄道会社を中心に声掛けをしており、賛同を得られ次第、始動させたいとする。

 グループ会社のナカヒロ、佐藤産業とは情報共有を密にした連携強化を進めており、糸から製品に至るまで一気通貫での事業推進を図る。今月中には東京支社内に3社の取り組みを融合したショールームを新設。ビジネスだけでなく、スクール、ワーキングなどのカテゴリーごと、素材ごとに多様な製品群を紹介する。