繊維の未来へ 輝く ― 今春入社した 若手の思い ―(1)シキボウ 繊維部門 吉川 響 さん
2024年07月01日 (月曜日)
暮らしをより豊かに
「“安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現へ”という経営のビジョンに共感しました」。吉川響さん(27)は就職説明会で、たまたま訪れたシキボウの企業姿勢に触れ、入社を決めた。信州大学大学院総合理工学研究科で繊維学を専攻していたこともあり、繊維業界への関心は高かった。
きっかけは小学生のころ、陸上競技で世界的なスーパースター、カール・ルイスのスパイクを開発した人の本を読んだこと。「軽くて丈夫な靴を作る。それには素材が重要であり、素材について気になり始めました」
入社後の4、5月は繊維だけでなく、産業資材部門なども含め7工場を研修で回った。「手先を使う作業で自分が不器用だと感じました」。紡績の富山工場(富山市)では撚糸機のセットが複雑でうまく作業できなかった。しかし、先輩社員に優しくコツを教えてもらうとともに、「仕事に対し真摯(しんし)に向き合う」姿に強い印象を受けた。
現在は2次研修中で、8月まで再び富山工場で働く。紡績とは「原料を撚るだけのシンプルなものだと考えていました」と言う。しかし、実際の工程を見ると、単に原料を混ぜるだけでなく、投入する順番など違えば、うまくいかないことを知った。糸のむらをなくす練条工程も何回も繰り返すといった「1本の糸にするためのこだわり」に対し、楽しさとともにモノ作りの奥深さを改めて感じた。
紡績工場だけに「わたぼこりがすごいですね」と話し、1週間もたてば慣れた、と笑う。8月以降は織布・染色加工のシキボウ江南(愛知県江南市)に移り、年末まで研修を受けた後、正式な配属先が決まる。
将来は研究開発を志望する。繊維では快適さや安心といったテーマでさまざまな機能加工が「開発され尽くされているかもしれません」。しかし、それでも「より機能性が高い素材や加工を開発してみたいですね」。その前提には「人々の暮らしをより豊かなものにしていければ」という強い思いを秘めている。
◇
繊維業界に対し、夢や希望を抱きながら入ってくる若者たち。そんな入社したばかりの若者たちは今、何を考え、行動しているのか。理想と現実とのギャップを乗り越えながら、次のステップへ進もうとする彼、彼女らの思いを紹介していく。