特集 環境(12)/社会の要請に応える/伊藤忠マシンテクノス/ケケン/カケン/QTEC

2024年06月27日 (木曜日)

〈超節水型染色機を提案/エネルギー使用量85%削減/伊藤忠マシンテクノス〉

 伊藤忠マシンテクノスは、新型の超節水型染色機として、アルケミー・テクノロジー(英国)の噴霧型連続染色機「エンデバー」と試験用「ディスカバリー」の本格提案を始める。染料液を微細な液滴にし、ノズルで噴霧して生地の裏側まで染める。洗いなど前後工程以外は水を使わず、従来の無地染めに比べて水使用量を95%、エネルギー使用量を85%削減する。

 エンデバーはロールトゥロールの連続染色で、ポリエステル用は染色、乾燥、フィックス、柔軟、乾燥をライン内で行う。現在は最大生地幅1・8㍍で、毎分最大20㍍の無地染めが可能。

 ノズルで噴霧する染液は微細な液滴にし、1・8㍍幅×1㍍中に12億個の滴を吹き付ける。ノズルは生地に対して角度を付け、吹き付ける際にノズルをナノレベルで振動させて液滴の粒を生地にぶつける。さらに生地の下からバキュームで吸引することで生地の内部まで染める。噴霧量やバキューム圧は調整可能。

 分散染料や反応染料など通常の染料を使うことができる。アルケミーの試算では、従来の染色法に比べて水やエネルギーを大きく削減するほか、薬剤使用量を30%、生産に必要な人手を50%減らすと言う。

 エンデバーは綿用とポリエステル用があり、加工剤を噴霧でコーティングする「ノバラ」もそろえる。日本ではまずポリエステル用のエンデバーと試験用のディスカバリーの提案に力を入れる。

 アルケミーと協業するJSRテックス(台湾)で実機が稼働しており、導入前に見学が可能。今春に開かれたオープンハウスでは世界から50社・200人以上が来場するなど注目度は高い。

〈自己宣言検証の仕組み作りへ/人権や認証なども用意/ケケン〉

 ケケン試験認証センター(ケケン)は、幅広い角度からサステイナブル対応に取り組んでいる。エシカル(倫理的)な繊維製品を認証するテキスタイル・エクスチェンジ(TE)、人権デューデリジェンス(DD、適正評価手続き)などに目を向けるが、中でも「環境ラベルの自己宣言」の支援に力を入れる。

 繊維関連では多くの認証があるが、「国際認証の取得はハードルが高い」と捉える企業もある。そうした中で注目されているのが自己宣言で、自分で基準を設定し、それを満たすことで環境に配慮していると宣言する。「ISO14021」として国際ルール化されている。

 ただ、グリーンウオッシュにつながる可能性もあるため、ケケンは、宣言を検証するような仕組みづくりを検討する。基準の策定とそのチェックなどを含めて、認証機関としてコンサルタント的な役割も果たす。これによって企業の環境配慮の取り組みを支える。

 働き手不足で外国人人材の活用が求められる中、人権DDについても関心が高まるとみる。今後は、人権に関連するセミナーの開催などを検討する。そのほか、昨年11月に「BCI」の認証機関に認定された。TEを含めて幅広いメニューで顧客のニーズに応える。

〈環境情報の開示促進へ/LCA算定など増加/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、ライフサイクルアセスメント(LCA)をはじめとする環境情報の開示支援などに力を入れている。サステナビリティ経営推進室が主体となってサービスを提供しており、繊維関連企業、他産業の企業を問わず、実施件数や問い合わせが増えている。

 LCAは、製品やサービスにおける資源採掘から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体の環境影響を定量的に評価する手法。環境負荷の見える化や環境配慮設計の促進、マーケティング施策などで活用できる。「ISO14040」シリーズで標準化されている。

 カケンのLCA情報開示は、基礎セミナーの実施や伴走型LCA算定コンサルティングなどのメニューがそろう。繊維に加え、自動車、建築・建材、機械製造などの業界で実績があり、繊維関連では糸や衣料品、靴で実績を積んでいる。

 そのほか、カケンでは、組織単位の温暖化ガス排出量(スコープ1、2、3)の算定・支援、CSR監査、化学物質管理(ZDHC)などにも対応する。また、ファイバーフラグメント試験や立体物に対するキセノン促進耐候性試験など、各種試験を取りそろえるのも強みだ。

〈TE・GOTS申請支援/サステナビリティ推進室発足/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、国際的認証機関のIDFLと業務提携し、テキスタイル・エクスチェンジ(TE)認証とGOTS認証の申請支援サービスを開始した。申請書提出に関連する説明を行い、認証取得を支える。

 TE認証やGOTS認証の取得には、申請書提出からその内容確認、監査実施、ライセンス発行まで幾つかの段階がある。QTECは申請書提出に関する支援を行い、IDFLと各認証の概要、申請手続きについて説明する。

 TEは、リサイクル製品を対象とした「GRS」などの認証がある。GOTSは、オーガニック製品を対象とした認証制度で、トレーサビリティーに加え、環境的・社会的要件なども含まれる。

 「100年続くQTEC」を目標に掲げるQTECは、その実現に向け信頼される第三者機関を目指している。SDGs(持続可能な開発目標)には2019年度から継続的に取り組んでおり、その深化の一環として、4月にサステナビリティ推進室を発足した。

 今後さまざまなアクションを取っていくが、まずは「職員一人一人がサステイナビリティーに興味を持ち、取り組むことが大切。職員ファーストで進めていきたい」とした。