特集 環境(7)/社会の要請に応える/豊島/モリリン/瀧定名古屋

2024年06月27日 (木曜日)

〈植物由来樹脂を多様な商品に/各地の廃棄物再利用/豊島〉

 豊島の「LandLoop」(ランドループ)は、環境負荷の低いバイオマスプラスチックのアイテムを作り出すプロジェクト。環境に配慮した素材を使用するだけでなく、さまざまな企業やアーティストとの協業を通じ、その地域にしかない文化、伝統、価値観に「プラスチックをプラスすること」(Local+tic)で、ローカル(地域)を面白くしていく。

 これまで奈良県の吉野杉のおがくず、三重県のカキ殻など各地方で発生する廃棄素材を原料の一部に取り入れることで、プラスチック素材の使用量を削減し、その地域ならではの特産物を活用しながらさまざまなアイテムを制作してきた。

 このほど、クマ型ブロックタイプフィギュア「BE@RBRICK」(ベアブリック)の本体原料に、ランドループの素材が採用された。今回の原料は、青森県弘前市で廃棄予定となった剪定(せんてい)後のリンゴの木で、ABS樹脂を融合させた。

 ベアブリックは、キャラクターフィギュア企画製造のメディコム・トイ(東京都渋谷区)が展開しており、九つに分かれる本体のパーツ以外は何も付け加えず、プリントだけでデザインを施す。

 ランドループを採用したのは、「人と環境にとって〝しあわせな製品〟を目指す日本産」をコンセプトにした新シリーズ「.jpベアブリック」の第1弾商品「アレキサンダー・ジラード・インターナショナル・ラブハート」(3万580円)。ミッドセンチュリーを代表する米国のデザイナー、アレキサンダー・ジラードによるアートワークが腹部にデザインされている。メディコム・トイの直営店やオンラインストアで販売中。

 ランドループは今後も、地方自治体などを巻き込みながら、全国に共創の輪を広げていく。

〈環境配慮型素材4種展開/廃ガス由来ポリエステル訴求/モリリン〉

 モリリン・ファイバーマテリアルグループは環境配慮型素材「エバーサークル」を打ち出す。原料の出自と背景をストーリー化した高付加価値型の素材を4種類そろえる。特に訴求を強めるのが廃ガス内の化学物質が主原料のポリエステル繊維「クークル」だ。

 クークルは有機化学プロセス「C1ケミカル」の仕組みを生かす。鉄鋼所がスチール製造時に排出する廃ガス内のCOと水素でエチレングリコール(EG)を生成する。テレフタル酸を合成してPET原料を作り、繊維化を経て糸に仕上げる。

 原料の合成は化学用品専門商社のハイケム(東京都港区)が、糸の生産は韓国の化学大手、暁星(ヒョースン)が行う。環境配慮への特徴として①スチール1キロ製造時に最大0・08グラムのEGが製造可能②バージンEG精製時比較でCO2排出量を55%低減③長繊維生産時にバージンと比較で14%のCO2排出量を低減――を持つ。

 クークルはバージン原料に近い品質を保ち、長繊維だけでなく短繊維の製造が可能。さまざまな種類の糸も生産できる。カーシートやインテリアなど内装資材や、ユニフォーム、スポーツ系アパレル製品などへの販売を強化する。

 エバーサークルは他にも、国内採取のペットボトルを使用した高純度ペレット「ボトリウム」や、廃棄対象の衣料品を繊維製商材に再生する「ビオロジックループ」もそろう。原着ポリエステル繊維とナイロン糸の製造工程でチップに添加し、微生物による生分解性を促進する「シクロ」を複合した「モコフィーロシクロ」も加わる。

 新たにボトリウムでは短繊維の開発や、生活雑貨や副資材など成型品の販売も進んでいると言う。

〈多彩なサステ商材/未利用生地の有効活用も/瀧定名古屋〉

 瀧定名古屋は「LIFE with EARTH」を掲げ、サステイナビリティーを意識した取り組みを進めている。多彩なサステ商材をそろえるほか、社内の未利用生地の有効活用や備蓄機能をサステなサービスとしても訴求する。

 サステ商材では「繊維to繊維」リサイクルに力を入れる。セーターなどの廃棄衣料を活用した再生ウール混の生地「リニュール」は年々販売量も増加するなど堅調に推移。各部署で横断的に展開し、アパレルや雑貨向けなど幅広い用途へ提案する。

 リニュールは尾州産地との協業も特徴だ。尾州で昔から行われていたウールの反毛に着目し、新たな価値として訴求する。近年はリニュールを使った産学連携も取り組んでおり、名古屋モード学園の学生が衣料品に仕上げるなどコラボレーションが進んでいる。

 ほかにも、廃棄漁網を再生した「リアミド」を活用し国内の尾州、北陸、和歌山の3産地で生産した生地や、スパイバー(山形県鶴岡市)による人工タンパク質繊維「ブリュード・プロテイン」と梳毛を組み合わせた生地などを展開する。

 2年ほど前から展示会などで使用したハンガー生地を再活用する取り組みも始めた。社内に生地を入れられるボックスを設置し、一定量集まったら学校や福祉施設などでのグッズ作りのために提供する。社会貢献の一環として進めている。

 同社は生地を備蓄販売するコンバーター。大量生産・大量廃棄が叫ばれる中で、「適時・適品・適量」を供給できる備蓄販売というサービスは時流に沿う。サステ商材を含めて豊富なバリエーションの生地を常時そろえる。