特集 環境(6)/社会の要請に応える/クラボウ/ダイワボウレーヨン/シキボウ

2024年06月27日 (木曜日)

〈「ループラス」の企業連携広がる/工場でサステファクトリー発信も/クラボウ〉

 クラボウは1993年から提唱する「ヒューマン・フレンドリー発想」の下、サステイナブルな素材・製品の開発や提案に取り組んできた。

 その一つが裁断片などを開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」だ。「“いいね”ボタンを押してもらえるが、なかなか発注のボタンを押してもらえない」として、価格的な問題から少しずつではあるが、理念に共感したさまざまな企業との連携が広がる。アパレルメーカーや各繊維産地の団体、百貨店、地方公共団体などさまざまな連携を通じて、モノ作りの現場だけではなく、日常生活での繊維製品のアップサイクルへの理解、浸透を図りつつある。

 デニム製品ではエドウインや高島屋などと連携。最近は日本航空(JAL)などと連携し、JAL機内で使われていたブランケットをアップサイクルして商品化するプロジェクトも始めた。

 タイ・クラボウにも反毛機を設置し、ベトナムやミャンマーなど縫製工場から裁断片を回収し、海外でもループラスのラインを活用する動きを模索。SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりを受け、ユニフォームでもループラスの試験的な運用に乗り出した。

 素材面では他にもユニフォーム向けに売れ筋のポリエステル・綿混のストレッチ素材「バンジーテック」で再生ポリエステル使いが増加。ハイパワーストレッチ素材の「ウルトラツイル」でもエコ化を進める。紡績工場内の未利用綿使い「リルコット」では再生ポリエステルと組み合わせるなどした商品開発が活発化してきた。

 サステイナブルファクトリーとして徳島工場(徳島県阿南市)だけでなく、安城工場(愛知県安城市)でも発信を強める。安城工場では廃棄物の削減、原料の再利用などを推進。徳島、安城の両工場で生産・加工した糸や生地を使うことで、エンドユーザーに対してサステなモノ作りに取り組む姿勢を訴求することができる。

〈レーヨンの特性生かす/リサイクルや海水中生分解も/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは国内唯一のレーヨン短繊維メーカーとして、低環境負荷素材としてのレーヨンの特性を一段と打ち出す。そのためにリサイクルレーヨンや海水中生分解性を確認したレーヨンなどの提案と販売を本格化させる。

 同社が現在、提案に力を入れているのが使用済み綿製品を原料として再利用したリサイクルレーヨン「リコビス」。海外のパルプメーカーと連携して原料のリサイクルパルプを確保しているため量産体制も整った。販売を本格化させたい考えだ。

 もう一つ注目が高まっているのが海水中生分解性も確認した「エコロナ」。レーヨンは木材由来の再生セルロース繊維のため生分解性があるが、海水中での生分解性も確認したことでマイクロプラスチックによる海洋汚染対策にもつながる素材として活用できる。

 合繊との混紡でも一浴での染色が可能になることで染色工程での水やエネルギーの使用量を削減できるカチオン可染レーヨンも注目素材。そのほか、化学的マーキングによって鑑別可能なトレーサブルレーヨンも量産に向けた準備を進めている。

 グローバルな評価や認証も重視している。適正管理された森林資源を使っていることを認証する「FSC」を取得しているほか、エコロナは海洋生分解性の国際認証「OKバイオディグレーダブルマリーン」を取得している。リコビスは昨年、リサイクル原料が適正に使用されていることを証明する国際認証「リサイクル・クレーム・スタンダード」(RCS)を取得した。カナダの森林保全団体であるキャノピーのファッションセクター向け繊維調達分析ツール「ホットボタンランキング」もランクインした。

〈綿再利用ペレットで物性向上/環境配慮型の選択肢充実/シキボウ〉

 シキボウは、循環型社会に貢献できる環境配慮型の素材を充実させている。最近では従来廃棄されている綿素材を新たに再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」を開発した。

 コットレジンは綿の端材をミクロサイズまで細かくし、ポリプロピレン(PP)樹脂と混ぜることで、PP100%の商品に比べて物性が向上。従来のプラスチック製品はもちろん、より強度や耐久性に優れた成形品が得られると期待される。製品の薄肉化にも貢献でき、樹脂の使用量削減や軽量化も見込める。

 「異業種への販路開拓につながる」として自動車部品、電化製品、建材など幅広い用途に向け、ペレットでの販売を想定している。国内の繊維製品の廃棄量は年間約73万㌧ともいわれ、大半が焼却や埋め立て処分される。プラスチック業界でもバイオマス化は海外メーカーへの依存が高く、原料となる食物生産への影響も懸念されている。循環経済に向け、コットレジンがそれらの課題解決に寄与できる可能性がある。

 製造技術では特許出願済み。日本有機資源協会の「バイオマスマーク」も取得している。現在は生産工程で発生する綿廃材や、ファスナーといった副資材などを使っていないタオルを原料にするが、将来的には廃棄衣料も有効活用していきたいとする。さらにPP以外の原料に混ぜる研究も進める。

 5月に東京ビッグサイトで開かれた「2024NEW環境展」に出展し、椅子をはじめ小物類などの製品サンプルを展示し、注目された。

 同社は生分解性ポリエステル「ビオグランデ」や、グループの新内外綿と連携するアップサイクルシステム「彩生」といった環境配慮型の素材、システムを充実。彩生ではベトナムなど周辺の縫製工場から端材を集め、タイで反毛する試験的な取り組みも始めた。選択肢を広げることで、さまざまなニーズを捉える。