特集 環境(4)/社会の要請に応える/東洋紡せんい/クラレファスニング/ユニチカ

2024年06月27日 (木曜日)

〈多彩なリサイクル実用化/反毛からマスバランスまで/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいはポリエステル、ナイロン、綿それぞれで多彩なリサイクルの実用化を進める。新方式の開繊技術による反毛から、マスバランス方式ケミカルリサイクルまで最新の技術を積極的に導入することで、衣料だけでなく資材分野も含めた環境配慮素材の社会実装に取り組む。

 ポリエステルで取り組むのが岩国事業所(山口県岩国市)で発生するポリエステル不織布の端材や取引先で発生するポリエステル廃材をマテリアルリサイクルする「ウェスティオ」。東洋紡せんいがメルトフローレート(MFR、熱可塑性樹脂の流動性)調整などをすることで高品質なポリエステル樹脂として再生する。現在はペレットでの販売だが、将来的には繊維化も視野に入れる。

 ナイロンは再生ナイロン繊維「ループロン」をリブランディングした。従来のマテリルリサイクルタイプを「ループロン―M」、マスバランス方式ケミカルリサイクルタイプを「ループロン―C」として打ち出す。特にループロン―Cは注目が高く、デンタルフロスで採用が進むほか、ファンデーション用途でも引き合いがある。

 綿は新方式開繊による反毛を使ったリサイクル紡績糸「さいくるこっと」を商品化した。金属針ではなくエアーの力で廃棄綿布を開繊することで繊維長が保持されるため、反毛100%糸や細番手糸の紡績が可能だ。こちらも注目は高く、婦人服やアウターなどで採用に向けた動きが加速する。

 資材用途でもユニークな開発が進む。炭素繊維と熱可塑性長繊維・短繊維を複合紡績した「CfCヤーン」は、成形性に優れ、樹脂含侵工程無しで炭素繊維強化プラスチックを生産できる。

〈リサイクルタイプ拡充/フック・ループ混在型も登場/クラレファスニング〉

 クラレファスニングは、国際的なリサイクル認証「リサイクル・クレーム・スタンダード」(RCS)を取得した環境配慮型面ファスナー「マジックテープ」リサイクルタイプのラインアップを拡充している。新たにフック・ループ混在型「フリーマジック」リサイクルタイプも登場した。

 同社は2022年に原料の30%(製品重量比)に使用済みペットボトル由来のリサイクルポリエステル糸を使用したポリエステル100%面ファスナー「マジックテープ」リサイクルタイプを発売した。23年にはRCS認証も取得した。

 面ファスナーで一般的に使用されているバックコート剤を使用しない独自製法で製造しており、ポリエステル100%のためマテリアルリサイクル性も高い。今後、要求が高まるであろう繊維to繊維リサイクルで効果を発揮することが期待できる。

 また、溶剤不使用で、製造工程での二酸化炭素排出量を約30%削減(同社比)する。

 ユニフォームを中心に採用が増加しており、スポーツ・アウトドアでも採用に向けた動きが強まる。特に欧州での引き合いが強い。

 このため新たに要望の多かったフック・ループ混在型のフリーマジックもリサイクルタイプに追加した。1本のテープにフックとループを混在させることでフックテープとループテープの付け間違いを防止するほか、肌に触れる際のチクチク感を低減し、生地への引っ掛かりも防止する。

 同社では今後、衣料用途以外にも提案を進めるほか、将来的に既存商品を全てリサイクルタイプに転換することも視野に入れる。

〈環境配慮型が拡大/廃棄物削減で成果/ユニチカ〉

 ユニチカは、2020年にサステナビリティ推進室を立ち上げ、同社の「サステナビリティ方針」の達成に向けた取り組み強化と指標(KPI)に基づく評価を行っている。23年度(24年3月期)は目標に対して達成率80%を確保するなど一定の成果を上げた。

 サステナビリティ方針では事業に関する優先課題として「安全で安心な暮らし」「便利で快適な暮らし」「環境と共生する暮らし」それぞれの実現を掲げる。

 そのためにマテリアルリサイクルポリエステル繊維、ポリ乳酸(PLA)樹脂・繊維「テラマック」、バイオマス由来原料ナイロン11繊維「キャストロン」、ケミカルリサイクルナイロン・ポリエステルフィルムなど環境配慮型素材の拡販を進める。ユニチカトレーディングの複重層紡績糸「パルパー」は再生ポリエステル使いの「パルパーエコ」や植物由来ポリマー使い「パルパー メード・ウイズ・ソロナ・ポリマー」の採用が増えてきた。

 企業活動の面では廃棄物削減で大きな成果があった。2成分複合型スパンボンド不織布「エルベス」はリサイクルが困難な素材のため端材は廃棄処分していたが、新たに設備を導入し廃棄物固形燃料(RPF)にする。4月から設備が稼働し、年間9千トンの廃棄物をRPFの原料として活用する。

 また、二酸化炭素排出量削減の取り組みでも評価が高まってきた。環境影響管理の情報開示システムを運営する英国の非営利組織であるCDPが算出するスコアリングでも、気候変動の項目でBランクを取得した。

 現在、ライフサイクルアセスメント(LCA)やカーボンフットプリント(CFP)算出のための体制強化にも取り組んでいる。そのために対応人員を3倍に増やした。各部署で算出したデータをサステナビリティ推進室で検証する体制も整備する。早期に環境情報の提供を可能にすることを目指す。