中国アーバンアウトドアの新潮流 ブランド編(1) 「SN 1604」
2024年06月25日 (火曜日)
機能、コスパ、デザイン追求
中国でアーバンアウトドアスタイルを打ち出す地場ブランドと、セレクトショップが活発な動きを見せている。本連載では両者の最新の潮流を追う。第1回は、機能性とコストパフォーマンス、デザイン性を追求するブランド「SN 1604」。
(上海支局)
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「SN 1604」は、2023年に四川省成都で設立された。親会社はアウトドアジャケット専門の縫製工場で、国内外ブランドのODMを手掛ける中で蓄積したノウハウを生かし、同ブランドを立ち上げた。創業者の徐達氏は、「これまで中国の地場ブランドにはなかった通勤着と、アウトドアを融合させたブランドだ」と説明する。
同ブランドは、機能性とコストパフォーマンス、デザイン性の三つにこだわる。アウトドアスタイルを打ち出す地場ブランドのほとんどは現状、「登山向けなどの本格的なアウトドアウエアか、セールスポイントとしてアウトドアスタイルを表面的に採用したブランドかのいずれか」(徐氏)の中、三つを追求することで差別化している。
本格的なアウトドアウエアはファッション性が劣る一方、ファッションとしてアウトドアスタイルを採用するブランドのウエアは、アウトドアの環境では機能性が不十分なケースが多い。「防水をうたっていても簡単な防水加工を施しただけのケースも散見される」
こうした中、同ブランドは3千㍍級の高峰でも通用するウエアを展開する。ジャケットやパンツには、防水性と強度、軽量性を追求した3層構造の生地を採用。親会社である縫製工場のノウハウを生かし、パターンと縫製で着心地を高めている。生地は東レグループの東麗酒伊織染〈南通〉(TSD)や、地場大手メーカー、東方盛虹の合繊織物を、親会社のODM事業と共同で仕入れている。
価格帯は、ジャケットが500~600元、シャツやパンツが100~200元。「中国のアウトドア市場は初心者が中心。価格競争力を高め、多くの人が手に取れるようにしている」と徐氏は述べる。
販売は、アリババ集団のネット通販サイト「淘宝」(タオバオ)の直営店での小売りと、他社が運営するタオバオ店への卸売り、さらに地元成都と北京のアウトドア用品店への卸売りを手掛けている。
この1年間、ショートムービーアプリ「抖音」(ドウイン)などのSNSを活用したプロモーションに注力しながら、売り上げを伸ばしてきた。5月末から先週まで行われたタオバオの大型セール「618」では、まずまずの結果を納めた。「初心者に向けた鮮やかな色のバリエーション展開が功を奏した」
成都の周辺は自然が豊かで、アウトドア愛好家が多い。ファッションへの関心が高い若者も多く、ファッション市場が盛り上がっている。こうした地の利を生かし、ネット通販での売り上げを一定規模に拡大した後、同地で専門店や期間限定店を出店していく考えだ。