産資・不織布通信Vol.12/岐路にあるSB/構造改革の動き活発化

2024年06月24日 (月曜日)

 日本のスパンボンド不織布(SB)メーカーが岐路にある。ポリプロピレンSBでは主力用途の紙おむつが日本での需要減、急拡大した中国は現地企業との競争激化から販売が低迷する。ポリエステルSBも土木建築、産業用はじめ幅広い分野の需要が低調で、原燃料価格の上昇で採算は厳しい。赤字企業もある中で、各社とも構造改革が活発化する。

〈規模の適正化へ/安価な原料調達検討〉

 韓国・中国・インドネシア、インドに生産拠点を持つアジア最大のポリプロピレンSBメーカーである東レが動いた。赤字のポリプロピレンSB事業を特定事業・会社の収益改善(ダーウィン)プロジェクトの一つに位置付け、2024年度第4四半期に水面浮上させる計画を組む。同プロジェクトは市場構造の変化、競合の台頭による競争力の低下などから状況が変化した事業・会社の稼ぐ力を復活させるのが狙い。大矢光雄社長がプロジェクトリーダーを務めるなど重要性の高さをうかがわせる。

 1999年、韓国セハン・インダストリーズを傘下に収めた後、グループ全体で1系列・約50億円に上るポリプロピレンSB設備の増強を続けてきただけに、同事業に投下した資金は巨額。一方で、主力の紙おむつは日本の需要減、急拡大した中国は現地企業と競争激化などから販売が低迷する。

 既に韓国子会社のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)では一部設備の休止など生産体制を見直し、固定費の削減に着手するが、中国子会社含めて全体で今後も生産規模を適正化するという。その他、差別化品の開発、新用途開拓を行い、水面浮上を目指す。

 原料調達も見直す。これまでTAKを主体に原料(ポリプロピレン樹脂)を集中購買してきたが、調達先を多様化し、安価な原料調達を行うと言う。

〈合弁で合理化なども/改善事業の位置付けに〉

 日本のポリプロピレンSBメーカーでは第2位の三井化学と第3位の旭化成は合弁会社、エム・エーライフマテリアルズを23年10月に設立した。SBのほか、メルトブロー不織布(MB)、通気性フィルム、形状保持繊維、フィルター製品の製造販売も行うが、簗瀬浩一社長は「合弁会社の目的の一つでもある合理化など構造改革を進めないと生き残れない」と分析。銘柄統合や生産設備の統廃合で生産効率を高め、原料一本化によるコスト削減も図る考えを示す。

 衛材偏重型の事業構造のため、産業資材も強化。両者の強みを生かした新商品開発も課題に挙げる。

 ただ、産業資材が主力のポリエステルSBも厳しい。ポリエステルSB最大手で、綿100%スパンレース不織布(SL)も製造販売するユニチカの不織布事業は23年度、各分野で需要が低迷し販売量が落ち込んだと言う。同社は前期に減損損失38億円強を計上したが、不織布もその一つに含まれる。東洋紡エムシーもポリエステルSBはじめ不織布を収益改善・事業モデル改革の事業に位置付ける。SBと直接関係はないが、24年4月にフィルターバグ製造子会社の東洋紡カンキョーテクノ(現・カンキョーテクノ)をニッケに売却した。

 水面下で設備休止や海外企業への生産委託の拡大などが検討されているとも聞く。日本のSBそして大手合繊メーカーの不織布事業は大きく変わろうとしている。

〈不織布の達人/野村商事/最新の地合測定器〉

 日本不織布協会(ANNA)は日本における不織布関連企業が集まる任意団体だ。不織布メーカーだけでなく、原料、加工、商社、機械関連などさまざまな企業が加盟する。

 その1社が野村商事(東京都千代田区)。1962年設立の紙パルプ・プラスチックフィルム・不織布などの試験・測定機器や消耗品を取り扱う専門商社で、昨年4月にANNAに加盟した。繊維・分子配向行測定器「SST」シリーズは国内だけで400台以上の納入実績を持つ。

 同社は5月24~26日に台湾・台北市で開催されたアジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」にも初出展した。「ANNA加盟も、ANEX2024への出展も当社が従来以上に不織布に力を入れる表れ」と野村和広取締役は言う。

 ANEX2024で提案したのが、不織布や紙・板紙の地合測定器「FMT―4」だ。国内外で販売実績を持つ「FMT」シリーズの最新機種で、透過光による画像解析型地合測定器であり、目視との高い相関性があり、各種画像や分析データにより品質管理・研究開発の両方に使える。

 同モデルからノートパソコンでの操作に対応したほか、測定対象坪量(紙の重量、不織布の目付と同じ)を拡大した。FMTシリーズは1990年初頭に発売したが、30~40%は内外含めた不織布関連企業が導入する。

 その特徴はより正確な地合の評価、多様な解析、測定対象の坪量の拡大、ランニングコストの低減など。地合評価は約7秒で行える。測定に影響を与える外部からの光を遮断する本体デザインを採用し、光源の制御機構を独自開発。良質な透過光による測定を実現した。解析ソフトをアップグレードし、微小なノイズも除去する。

 また、10種類のデータを出力でき、二つのサンプルの比較を容易にできる機能も設けた。光源にはLEDを採用し省電力化も実現する。

 FMTシリーズは試験・測定機器メーカーの製品ではない。専門商社ながら、同社にとって「数少ない独自品」の一つだ。自社で開発、製造販売する。ただ、完全受注生産のため、受注後3カ月の納期がかかる。

《トピックス》

〈建材用タイベックの新商品/米・デュポン〉

 米・デュポンのパフォーマンス・ビルディング・ソリューションズは、フラッシュ紡糸不織布「タイベック」による建材用「タイベック・トリフェクタ」の新タイプを発売した。同製品は優れた防火性と透湿防湿性を備えており、仕様は1・5㍍×25㍍の軽量サイズ。高層ビルの外壁用などに提案する。

 同製品は現行の欧州防火分類基準「EN13501―1」に準拠した「A2―s1d0」クラスの防火性能を備える。クラスBに適合することが必要な現行の英国建築規制も上回る。12カ月の紫外線耐久性も備えており、建設中の構造物を保護する「エアガードFRシステムテープ」と組み合わせることで、防火・防湿性能をさらに高め、高層、平屋、住居、商業プロジェクト、ホテル、病院、学校など、あらゆる建物向けに販売する。

〈来場者は1万2千人強/ANEX2024〉

 5月22~24日、台湾・台北市の台北南港展覧館1館で開催された、アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」の来場者数は37カ国・地域から1万2187人だった。主催のアジア不織布協会、台湾区不織布工業同業公會が明らかにした。出展者数は18カ国・地域から329社。

 新技術を発表する「A―Next Hub」では12社が自社製品をアピールした。日本企業ではユウホウが熱可塑性炭素繊維不織布、クラレが熱可塑性エラストマー、日華化学(台湾子会社)が環境配慮型染色助剤を紹介。アジア・ノンウーブンズ・カンファレンスでは帝人フロンティアはじめ、10社が講演。グローバル・ノンウーブン・サミットはアジア、欧州、北米、インド、タイ、ベトナムの不織布産業の報告とパネルディスカッションが行われた。

〈1社除き増収増益に/上場不織布メーカー決算〉

 不織布関連の上場4社の2024年3月期連結業績は日本フェルトを除き増収増益となった。

 ダイニックは不織布を含む住生活関連事業が市況回復と値上げに伴う増収、生産強化による採算性改善で、売上高は137億円(前期比3・2%増)、営業利益は3億7900万円(前年度比4・5倍)となった。不織布は展示会用カーペットが受注好調、住宅用床吸音材や車輌用不織布も堅調に推移した。

 ハビックスは不織布関連事業が売上高75億円(12・1%増)、セグメント利益10億円(72・7%増)だった。パルプ不織布は外食産業向けが回復し、主力製品である業務用クッキングペーパーの販売増につながった。化合繊不織布は、紙おむつ向けの販売先の新規開拓が寄与した。値上げや原価低減もあり、利益も増加した。