東レのポリエステル短繊維 適正生産規模を模索

2024年06月24日 (月曜日)

 東レは、市況悪化で採算が低迷しているポリエステル短繊維事業の抜本的な改善に取り組む。生産体制の再構築も視野に入れ、適正な生産規模を模索する。このため国内工場と海外子会社ともに大量生産型設備である連続重合・直接紡糸設備の取り扱いが焦点となってきた。

 ポリエステル短繊維は現在、世界的に市況が極めて悪い。主力用途の一つであるポリエステル・綿混シャツ地などの需要が新型コロナウイルス禍以降大きく減少する一方、原燃料や副資材、物流のコストが大幅に増加した。そこに中国のポリエステル短繊維メーカーが低価格販売を続けており、わた値が低迷。このため日本だけでなく東南アジアのポリエステル短繊維メーカーなども軒並み採算悪化に見舞われた。

 東レもポリエステル短繊維事業の採算が低迷している。このため現在、全社で取り組む「特定事業・会社の収益改善プロジェクト」(通称ダーウィンプロジェクト)の対象事業の一つに位置付け、早期の収益改善と中長期的な成長に向けた構造改革に取り組む。

 現在、東レグループはポリエステル短繊維を愛媛工場(愛媛県松前町)、インドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)、韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、マレーシアのペンファイバー(PFR)で生産している。現在の市場構造を見極めながら適正な生産規模を模索する考えだ。

 特に大量生産型設備である連続重合・直接紡糸設備の取り扱いが焦点となる。連重設備は愛媛工場とITSにそれぞれ1系列、TAKに5系列あるが、既にTAKの1系列の稼働を停止した。今後、拠点横断で生産品種の集約など視野に入れ、残りの連続重合設備をどうするかも含めた生産体制再構築を検討する。その上でコストダウンや生産品種の見直しなども進め、2024年度(25年3月期)中には単月や四半期ベースで黒字浮上させる方針。

 また、投下資本利益率(ROIC)を重視した中長期的な収益構造を構築することも課題。連続重合設備を縮小したことでバッチ式紡糸のウエートが高まる。多品種・小ロット生産や特殊わたの生産で優位性のあるバッチ式紡糸を活用し、中長期的な収益性・成長性が見込める生産品種や分野・用途の掘り起こしや創出に取り組み、ポリエステル短繊維事業の維持・拡大を目指す。