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素材メーカーのユニフォーム地販売/活路は高付加価値化と海外開拓/在庫調整と値上げの狭間で

2024年06月18日 (火曜日)

 素材メーカーのユニフォーム地販売は、昨年後半からワーキングの在庫調整に加え、値上げの影響で不透明感が漂う。素材の高付加価値化に加え、海外市場への開拓で活路を探る。(於保佑輔)

 素材メーカーは昨年後半から今年前半にかけ、値上げをしてきた。価格転嫁が進み、一部の企業では採算の改善が見られるものの、今年後半にかけて「値上げしない」と、はっきり言い切る企業は今のところない。

 その理由の一つは為替。今年1月、1ドル140円台後半だった為替は、4月に日銀のマイナス金利政策を含む大規模緩和政策の解除によって円高に振れると予想されていた。しかし、その気配はなく、さらに円安となる150円台後半で推移する。この為替が続けば「値上げをお願いするしかない」というのが各社の一致した意見だ。

 もう一つはいまだに続く原燃料や人件費、物流費などのコストアップ。電気・ガス料金の政府の補助金が5月で打ち切られた影響もこれから出てくる。値上げを継続しなければ「生産場も耐えられなくなる」(東レの梅田輝紀機能製品事業部長)と危機感を募らす。

 ワークウエアメーカーの中には、生地の値上がりを含め、さまざまなコストアップを受け24秋冬向け新商品の投入を見送る動きも出てきた。素材メーカーにとって、企業による経費削減によるユニフォーム支給枚数の減少傾向と、値上げによる数量減の「ダブルパンチをどう食い止めるか」(クラボウの絹本良和ユニフォーム部長)が、今期の大きな課題となる。

 日清紡テキスタイルでは高通気とストレッチ性を兼ね備えた「エアリーウェーブ」の販売が「計画以上」(米本克彦テキスタイル事業部長)と堅調。ポリエステル・綿混の定番生地は売上高で現状6~7割あるが、「確実に半分以下になってくる」として、高付加価値素材の販促を加速させる。

 ニット素材も需要拡大によって突破口を作る可能性がある。東洋紡せんいでは「コンフォネックス」「スクラムテック」といった特殊編み地の採用が進む。これまでニットに対し「スナッグができやすいなど抵抗感があった」(山本慎太郎ユニフォーム事業部長)が、技術力で解消。サービス向けでは高機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」も「着実に増えている」。

 今年5月に初めて岡山市や広島県福山市でも素材展を開いたシキボウでは、台湾の長繊維合繊糸を使ったトリコット素材が注目された。エンボス加工で生地表面に変化を付ける、転写プリントを施せるといった差別化によって商品で新たな見せ方ができるとともに、製品OEMによる提案もできる。

 海外への販路開拓に取り組む動きも加速。東レは、労働安全への意識が高まるアジア市場を中心に難燃素材「ナフレム」の商談が進む。後染めが可能なラインアップをそろえ、ストレッチ性で「両立しているものがない」(梅田氏)ことから評価されつつあり、輸出で「成果を出したい」。

 クラボウは難燃素材「ブレバノ」の販売量が大幅に増えており、今期(2025年3月期)も「既に大口の案件を中心に受注があり、計画達成が見えてきた」(絹本氏)。中東へも輸出実績ができるなど、海外へも販路が広がっており、ISO(国際標準化機構)やNFPA(全米防火協会)基準に対応した素材の需要をうまく捉える。