豊島/サステ社会実現へ向け行動/デジタル技術活用も推進

2024年06月14日 (金曜日)

 「ライフスタイル提案商社」を掲げる豊島は、持続可能な社会の構築に向けた行動を起こし続ける。環境に配慮した素材や最先端のデジタル技術といった多様な切り口で、社会の課題解決に取り組む。商社としての進化を図りながら、消費者が安心して暮らせる未来を切り開こうとしている。

〈オーガビッツ/20周年に向けた事業開始〉

 豊島が展開する、オーガニックコットンの普及を通じて社会に貢献するプロジェクト「オーガビッツ」が、2025年8月29日に開始から20周年を迎える。この記念日までの期間、ファッションブランドや生活者に向け、20周年に関連した各種の共同事業やイベントを実施していく。

 オーガビッツは、アイテムにオーガニックコットンを10%以上使用することを要件とし、ファッションブランドに参画を呼び掛けてきた。オーガビッツを導入したアイテムの価格には、オーガニックコットンの農家や関連するNPO法人を支援する寄付金が含まれる。

 20周年企画として、オーガビッツと日本クリニクラウン協会との協業限定で、ファッションアイテムや雑貨に赤鼻をつけたキャラクターデザインを使用できるようにした。既存のスヌーピーのほか、サンリオのハローキティなども品ぞろえに加わった。デザインを導入したアイテムの売り上げの一部が、病院で過ごす子供たちに笑顔を届けるクリニクラウン(臨床道化師)の活動に寄付される。

 豊島の電子商取引(EC)サイト「リサーキュレット」でも、20周年記念商品の販売を予定。

〈アップドリフト/ユニフォームの素材にも〉

 アップドリフトは、海岸などで回収したペットボトルごみを環境負荷の低い新しい製品へと再生させる取り組み。原料となるペットボトルごみは、地方公共団体や企業と連携して行うビーチクリーンアップ活動で回収しており、沖縄県石垣市などで活動を実施してきた。

 これまで趣旨に賛同した企業の時計やアパレル製品の素材に採用された。その範囲はユニフォームにも広がり、オンワードコーポレートデザイン(東京都千代田区)が手掛けるドトールコーヒー(同渋谷区)の新ユニフォームに採用された。12月から全国2万人の従業員が着用する。

 約8年ぶりに一新されるユニフォームは、従業員の意見を取り入れ、機能性やファッション性に加えてサステイナブル素材であるアップドリフトを採用した。従業員が地球環境問題を身近な問題として捉える契機にする狙いが込められている。

〈ホガラ/協業でフェムテック広げる〉

 「Hogara」(ホガラ)は女性社員が中心になって立ち上げたフェムテック・フェムケアのブランドで、働く女性たちの声を反映させた商品を生み出している。「アクティブな女性のほがらかな毎日を応援する」をコンセプトとするBtoB向けの協業プロジェクト「ホガラクティブ!プロジェクト」も推進する。

 このほど、アウトドア事業を行うヤマップ(福岡市)との協業で、サニタリー期間でも山歩きを楽しむ女性に向けた「YAMAP別注 吸水ショーツレギュラー」を発売した。事前に実施したアンケートを基に、登山の際に生じる悩みや不安を解決する商品を製作した。

 コンディショニングブランドを展開するTENTIAL(テンシャル、東京都品川区)に呼び掛け、商品化に至ったのが「Hogara×TENTIAL 吸水サニタリーショーツレギュラーPro」。両社が追求していた、働く女性がサニタリー期間でも通常のパフォーマンスを発揮できる吸水ショーツを完成させた。

 異業種との協業は商品開発にとどまらない。3月からは、三井不動産レジデンシャル(同中央区)が開業した賃貸レジデンス「ソコハウス」と、「小さな気付き」をテーマにしたトークイベントも実施した。

〈バズユー/クリエーターとコラボ〉

 「BUZZU」(バズユー)はモノ作り支援のECサイトで、誰でも簡単にオリジナルグッズやTシャツを1点から作ることができる。利用者は帽子、トートバッグなど150種類のアイテムから選び、好きなデザインへのカスタマイズも可能だ。

 このほどクリエーティブ・スタジオのR11R(アールイレブンアール、東京都中央区)と提携し、1年間にわたって共同企画を実施することになった。R11Rは、900人を超えるクリエーターとパートナーシップを結び、話題のアーティストのミュージックビデオやファッションアパレルとの共同企画を数多く手掛けている。

 第1弾の企画は、厚塗りの絵柄が人気のイラストレーター・旧都なぎさんと協業した。旧都さんがバズユーを活用したアイテム作りの工程を、自身のユーチューブチャンネルで配信している。描き下ろしのイラストを使用したアイテムの受注販売も期間限定で行った。

 バズユーは今後も、さまざまなクリエーターや企業との協業を推進する。

〈n感性AIシステム/数千パターンの柄を制作〉

 人工知能(AI)の活用によってアパレル生産の進化を図る取り組みにも力を注ぐ。中でも提案を強めているのが、人の感性と基になる柄の情報を組み合わせることで、数千パターンの柄を生成AIが自動で制作する「n感性AIシステム:バーチャルスタンダード・AIパターン」。

 同システムは、柄を生成AIで制作する際、種類ごとに「かわいい」「現代風な」「清潔感のある」といった好みを表現できる46のキーワードを設けた。加えて「ノーマル」「やや」「かなり」の3段階で強弱の程度を選べるようにした。これらを選択すると、1~2秒で柄が完成する。

 現時点では豊島が独自に作成したプリントアート21柄をベースとした5万柄を貯蔵している。ファッションブランド、クリエーター、プリントサービス事業者などに同システムの導入を促し、業務効率の改善や新しいアイデアのヒントにつなげてもらう。