不織布の今 ANEX2024から(5)

2024年06月12日 (水曜日)

台湾半導体産業向けも

 アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」(5月22~24日、台北市)に出展した日本企業は原料メーカーから不織布メーカー、商社などバラエティーに富んだ顔ぶれだった。

 日本最大の不織布メーカーである日本バイリーンも日本不織布協会(ANNA)が組織したANNAパビリオンに出展した。15年にドイツ・フロイデンベルグと東レによるTOB(株式公開買い付け)で上場廃止となったことは記憶に新しいが、早いもので新体制となって来年で10年になる。

 同社によると、22年度(1~12月)の連結売上高は706億円強に上る。ダイワボウホールディングスやクラボウの24年3月期の繊維連結売上高を上回る規模だ。各種不織布のほか、子会社でフロアマットなど不織布ではない製品や再生ポリエステル短繊維も製造・販売する。今回展でも総合不織布メーカーとしての存在感を示した。

 その一つが静電気除去スパンレース不織布で、実験器具を用いて説明していた。台湾開催もあり、半導体産業向けに訴求した。膜基材も同社ならでは。通常、逆浸透膜などは湿式不織布製の支持体を用いるが、同社が手掛けるのはサーマルボンド不織布。主にMF膜(精密ろ過膜)を水槽中に浸漬させる浸漬型膜分離活性汚泥法(MBR)用に展開する。

 1960年設立の同社よりも早い58年に日本で短繊維不織布生産を始めた金井重要工業(大阪市北区)は、短繊維不織布だけでなく、紡績用トラベラ、リング、カード工程に不可欠なメタリックワイヤ、針布などの繊維機器も製造販売する。

 国内外のANEX出展が顧客でもあるメタリックワイヤのほか、耐熱プレフィルターや台湾の情報機器産業に向けてプリント基板向け不織布研磨ホイール、ウエハ用研磨パッドなどを提案した。

 メタリックワイヤはカード工程で繊維の不純物や短い繊維を除去し方向性をそろえるもの。中国・インド勢との競合が厳しいものの、不織布用に関しては横ばいを維持するという。

 特殊繊維を用いたケミカルボンド不織布製の300℃対応耐熱プレフィルターは自動車塗装の乾燥工程に使用される。不織布製造時の接着剤と乾燥処理がポイントだ。

 ウエハ用研磨パッドやプリント基板用研磨ホイールも同社の予想以上に関心を集めたと言う。台湾開催を踏まえた提案が奏功した形だ。