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帝人フロンティアのスポーツ素材 25秋冬も新質感+機能性

2024年06月11日 (火曜日)

 帝人フロンティアは25秋冬スポーツ素材として、引き続き新質感と合繊ならではの機能性に焦点を当てた開発素材の提案に力を入れる。

特にニット生地は新規開発商品を相次いで発表しており、織物も合わせてスポーツ用途からの発信を起点に全衣料用途に向けた商品提案・開発に取り組む。

 近年、スポーツ素材はリサイクル糸使いなど環境配慮素材の活用が必須条件となっているが、加えて新たな切り口の提案や高付加価値化が欠かせない。このため同社は25秋冬でも環境配慮をベースに天然繊維調やメタリック調外観といった新質感と、保温性や汗処理など合繊ならではの機能性を付与した素材開発と提案に力を入れる。

 その一つとして中空8フィン断面ポリエステル紡績糸「オクタsf」を開発し、ニット生地と織物の両方で提案する。特にニット生地はこれまでも新素材を相次いで発表してきた。25春夏向けに投入した「ミクセルNP」は単糸レベルでポリエステル長繊維とナイロン長繊維を混合することで実現した新質感を打ち出し、25秋冬でも引き続き重点提案する。

 織物はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)複合繊維「ソロテックス」を活用した「フレキシング」シリーズを拡充するほか、コットン調ポリエステル長繊維織物「アスティ」も人気が高まってきた。ラミネートフィルムまで含めたポリエステル100%透湿防水生地「エコストーム」も“モノマテリアル”(単一素材)によるリサイクル性の高さに注目が高まる。

 近年、衣料用繊維は用途のボーダレス化が進む。このため同社はスポーツ用途を起点とした開発と提案を進めながら、スポーツ用途発信の開発素材をファッション衣料やユニフォームなど全衣料用途に向けても提案する。

前年度並み確保へ

 帝人フロンティアは2024年度(25年3月期)のスポーツ素材販売で前年度並みの数字を維持することを目指す。欧州を中心に市況の回復が遅れているが、これまで開発してきた新商材で具体的な成果を上げることでカバーする戦略だ。

 23年度のスポーツ素材販売は欧州を中心にアパレルの生産調整が続いたことで勢いがなかった。国内市場も前半こそ堅調だったが、後半から暖冬など天候不順の影響で勢いが鈍化した。

 24年度に入って販売は回復傾向にあるものの「22年度の水準にまでは戻らない可能性がある」(衣料素材本部の白石和男テキスタイル第二部長)と指摘する。特に欧州の市況回復が遅れており、国内市場も勢いがない。

 ただ、「これまで開発してきた素材が、ここに来て市場にマッチしてきた」ともみており、今期は販売面で具体的な成果を上げることで市況の回復遅れをカバーしたい考え。スポーツ発信の素材をカジュアルやユニフォームなどにも応用することでテキスタイル販売の底上げを進め、23年度並みの業績を確保することを目指す。