不織布の今  ANEX2024から(3)

2024年06月07日 (金曜日)

炭素繊維や銅使いも

 アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」(5月22~24日、台北市)では、大手企業の出展内容に違いが見られた。帝人フロンティア同様、さまざまな製品を出品したのは東洋紡エムシーだ。短繊維不織布製造子会社の呉羽テック(滋賀県栗東市)、ユウホウ(大阪市北区)との共同ブースで、長・短繊維の不織布総合メーカーでもあることも訴求した。

 そして、機能性不織布をそろえた。興味深いのがユウホウで、熱可塑性炭素繊維ニードルパンチ不織布(NP)「疾風―HAYATE(ハヤテ)―」と銅100%NPを出品した。ハヤテは炭素繊維とナイロンなど熱可塑性繊維によるNP。カード機での炭素繊維の損傷をできる限り抑え残存繊維長を長く残した中間材料だ。この技術を活用し、銅100%NPを開発した。ハヤテと組み合わせて電磁波シールド材などの開拓に取り組む。

 通常、炭素繊維や銅繊維を不織布化する場合、前工程のカード機や交絡するニードルパンチ機に工夫が必要となる。他の設備と原料が混ざらないように、専用ラインにする必要もある。同社も専用ラインを設けて、生産する。

 呉羽テックは熱接着不織布「ダイナック」や3次元網状体「クレバルカー」を提案した。ダイナックはスパンボンド不織布(SB)製法による蜘蛛の巣状シートだ。アイロンやホットメルト機で接着できる。海外勢では米国のスパンファブが有名だが、日本では同社のみが製造するといわれる。

 クレバルカーは東洋紡エムシーのクッション材「ブレスエアー」と構造は同じだが、低目付品となる。そのブレスエアーは今回、市場から回収したブレスエアーを再生原料にし、25%配合したブレスエアーRシリーズを紹介した。

 同社ではその他、ポリエステルSBや活性炭素繊維「Kフィルター」などを紹介したが、汎用品とも言えるポリエステルSBでも特殊品を訴求した。それが、グリーンズグリーン(新潟市)が開発したスナゴケシート。基布にポリエステルSBを使用する。本物のスナゴケを生育したサンプル展示は関心を集めていた。

 ポリエスエルSBも競合は激しい。同社ではSBの加工度を高める戦略を組む。スナゴケシートはその表れでもある。

 同社のように多彩な展示ではなく、製品を絞り込んだ提案を行った企業もあった。その1社がクラレだ。しかも、出品したのは不織布ではなかった。