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ユニフォームに地元産生地/三備産地/制服で地域のモノ作り表現

2024年06月06日 (木曜日)

 岡山県南東部から広島県東部にまたがる三備産地は国内有数の繊維産地だ。産地内にはデニムをはじめ、織布工場が集積する。近年は地元で生産された生地を地元企業などがユニフォームに採用する動きも広がってきた。

(秋山 真一郎)

 デニムの生産が盛んな広島県福山市。宿泊や地域再生事業などを手掛けるサン・クレア(福山市)は昨年、同社が運営するアンカーホテル福山(同)のスタッフの制服を刷新した。制服に採用したのは福山産のデニム生地だ。

 ホテル名のアンカー(船のいかり)にちなみ、“船の乗組員”をテーマに作った。生地にはデニム製造の篠原テキスタイル(福山市)の、生地表面に凹凸がある「バーズアイ・デニム」を採用。さらに、裁断から縫製、特殊加工、洗い加工、デザインまで全て同市内の企業が担った。同ホテルの広報担当者は「制服を通して、この町の(モノ作り企業の)技術を伝えたい」と話す。

 岡山県倉敷市の児島地域は縫製、洗い加工、ジーンズメーカーなど、ジーンズ関連企業が集積する。同地域内にある中山保育園は昨年からデニム製の制服を導入している。

 制服を手掛けたのは地元の縫製工場のココロだ。ジーンズ産業の盛んな児島にちなみ、制服へデニムを採用することにした。制服はカバーオール風で、パッカリングやシボ感を出すなど本格的な作り。同社担当者は「大人になって小さい頃を振り返った時、ジーンズの生産で有名な児島で育ったことを思い出してもらえればうれしい」と語る。

 スクールユニフォームに地元産生地を採用する動きも一部で見られる。福山市立新市中央中学校は2023年度の新入生から新制服を導入している。制服用に生地を供給するのは、デニム製造国内最大手のカイハラ(同)。同校は22年の再編を機に、地元企業のデニムを使った制服を作ることを決めた。同校と同じく、福山市新市町に本社を置くカイハラへ協力を求めた。

 デニムは色落ちをすることから、学生服への採用はNGだった。そのため、デニムに近い生地感を表現した、ポリエステル・「テンセル」モダール混の生地を採用した。制服の生産は菅公学生服が手掛けた。新制服は生徒に加え、地域の人々からも好評のようだ。

 福山市に隣接する岡山県井原市もデニムの生産が盛んな地域。同市では、市内五つの中学校が来年度に制服を刷新する。新制服導入に当たり、「井原市の誇りであるデニムの要素を取り入れること」が条件の一つとして挙げられた。

 新制服はブレザー制服となる。制服生地にデニムを使うことは難しいため、各校のオリジナルワッペンに同市産のデニムを使用し、井原らしさを出した。エンブレムのデザインは各校の生徒が考えた。新制服は来春入学予定の新入生267人が着用する。