繊維ニュース

フードリボン パイナップル繊維工場完成

2024年06月05日 (水曜日)

 未利用農業資源などの活用で循環型経済の実現を目指す沖縄発スタートアップ企業、フードリボン(沖縄県大宜味村)の本社工場が完成し、このほど開所式を開いた。パイナップル繊維の商品化を進めており、兵庫県立工業技術センター(神戸市)と協力して可紡性向上などの研究開発も加速する。

 パイナップルはアジアや中南米で広く栽培されているが、果実収穫後の葉は廃棄される未利用農業資源。このため葉に含まれる葉脈繊維を抽出して利用することが以前から検討されていたが、生産性やコスト、品質面で課題が多く、広く普及するには至っていない。

 これに対してフードリボンは高圧ジェット水流によって効率的に繊維を抽出する技術と機械の小型軽量化を実現した。TSIホールディングスや豊島などの出資を得て事業化に取り組んでいる。建設を進めていた本社工場「フードリボンファクトリー」も3月に完成し、5月29日に開所式を開いた。パイナップル繊維抽出装置6台を設置し、研究開発やデザイン企画を支援するスペースも設けた。抽出したパイナップル繊維は新内外綿で綿と混紡するなどし、衣料品や服飾雑貨など幅広い用途での採用を目指す。

 同センターと連携し、パイナップル繊維の可紡性向上の開発も加速する。パイナップル繊維など葉脈繊維は剛直で硬いことが可紡性の低さにつながっている。従来はセルラーゼ酵素処理によって分繊する方法が検討されていたが、新たに高濃度アルカリ処理によって繊維の形態や機械的特性、結晶性を変化させることで可紡性を向上させる研究に取り組んだ。

 実験の結果、高濃度アルカリ処理によってパイナップル繊維の硬直な構造が捲縮(けんしゅく)形態に変化することを確認した。引張強度と破断伸度の測定では、いずれもセルラーゼ酵素処理と比べて優れた数値となり、しなやかな繊維へと変化している。これにより可紡性も向上することが期待できる。これら研究の成果は、このほど開かれた日本繊維機械学会の年次大会でも披露した。